第57話 マヤ・システム

「えー、星くんが重力制御装置なんてできるの?」


「嘘ー」


「まさかー」


いろんな否定的な声がクラス中で起こった。


「僕は以前にも作ったことがあるから自信があるんだナ」


「せやな、こいつはこんな顔してるけど結構やるときはやりまっせ」

秀が捕捉する。


そういう会話をしてる時であつた。


「ガラガラ」と音がして教室のドアが開いて疲れきった顔をした摩耶が入ってきた。


「すいません、遅れました」


「摩耶ちゃん珍しいわね、今日は遅刻?」

クラスメートが話しかける。


「そうなのお化けトンネル内でたくさんの人に捕まってしまって。それはもう大変だったわ」と汗を拭きながら摩耶が説明した。


「そうなの、どれぐらいたくさんの人が来てたの?」

メグが尋ねた。


「ゴジラ部長のお父さんや、新谷先輩のお父さんも来てたし、有名なYouTuberも来てみんなから質問攻めだったの」


「ほな、みんなにワープ見せたんか?」


「うん、住吉神社まで移送のテストも見せてあげたわ」


「ぱっと消えたから、みんなびっくりしたでしょうね」


「うん、みんな驚いていたわ」


「さよか、ほなら今日中に日本中で噂になりまんな」


「それは間違いないんだナ」


「こら!そこ!授業中は私語はあかんな、慎しむように!」

先生の叱咤が飛ぶ。


「先生、それどころやおまへんで。摩耶はんが今日『マヤ・システム』で瞬間移動したこてが日本中に公表されましたんや」


「マヤ・システム?」

摩耶が聞く


「せや、摩耶はんがやってるさかい『マヤ・システム』でんがな」


「そのマヤ・システムとはどんなものでつか?」

先生が尋ねた。


「そうなんだナ。お化けトンネルから住吉神社経由で世界各地に行けるんだナ」


「本当に君たちは言うことがオモロイな、冗談でもそういうの先生は嫌いやないで」


「冗談ではないです。ちょっと先生これ見てください」

一番前の席に座っていた桐山がスマホのYouTubeを見せた。


「なんでんねん?これ?授業中のスマホは・・・」


「まあまあ」


画面にはつい先ほど「玉袋」がアップした摩耶が瞬間移動している動画が流れている。


視聴者数はすでに100万をゆうに超えていた。


そこにはゆっくり歩いていた摩耶の姿がトンネルの中央でいきなり消えてしまう画像が繰り返し流れていた。


「こ、これが瞬間移動でっか・・・ほんで摩耶さんどこに移動したんでっか?」


「はい、渦森台の住吉神社・奥宮です」


「それを信じるとして、移動の原理は一体何でっか?」


「私もよくわかりませんが、メグちやんたちが言うには磁場の影響らしいです」


「磁場・・・ようわからんな。物理の法則にかなってまへんで」


「バリバリバリバリ」と急に何機かのヘリコプターの爆音が聞こえてきた。


お化けトンネルの頭上に新聞社やテレビ局などの報道機関が集まっているようだ。


またそれに伴い、かなりの数の群衆が集まっているのか交通整理をするためのたくさんのパトカーのサイレンの音が聞こえる。


「あ、1000万を超えた!」

桐山がスマホを見ながら視聴者数の増加を伝える。


「なんや知らんけど恐ろしい事態が起こったようやな。ほな授業は終わりにしますわ。先生もはよ見に行きたいさかいな」


物理の時間が終わった。

















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