第52話 ゴジラとラスカル

ゴジラこと渡辺部長が神戸市役所観光課に勤めている父親の二郎と話をしてる。


「だからさぁ、親父。俺が部長やってる超自然科学研究部の新入生がとんでもない連中で国道2号線の下のお化けトンネルから渦森山まで瞬間移動できたんだ」


「本当かその話は?」


「本当なんだ。この俺が言うことだ、信じてくれ」


「うーん、お前が言うんだから間違いないな」

どうやらゴジラは父親の信用が熱いらしい。

部員の新谷や播磨とは大違いだ。


「という事は俺の志望校の信州大学に進学した場合でも、長野の神社まで瞬時で行けるから下宿する必要もないんだ。要は神戸から日帰りできるんだぜ」


「たしかに、そんな装置があれば便利だよなぁ」


「しかも彼らが言うにはわが故郷神戸は太古の昔、世界の中心だったと言うんだ。これ面白いだろ?」


「面白い話だなぁ、父さんは今市役所の観光課に勤めてるから何とか日本中いや世界中から神戸に観光客を集めたいと願っているんだ。世界の首都と言うのはこれまた面白いキャッチフレーズだな」


「だろ?しかも過去においてうちの高校の近くの住吉神社が世界中の神社へのハブ空港だったと言うことらしいんだ」


「しかし夢がある話だな。お前の言うことを100%信じる。いちどその移送瞬間とやらに立ち会って見てみたい」


「移送を見せるのは大丈夫だよ。移送体験も可能だ。むしろ彼らもどんどん宣伝してくれと言ってるから願ったり叶ったりだろう」


「分かった明日市役所には出勤が遅れることを伝えておくから実際に現場で見せてくれないか?」


「わかった、じゃぁ明日は俺と一緒に登校しよう」


「了解した、案内してくれ」

二郎は突飛な話に半信半疑ではあるが息子の言うことを信じて明朝の約束をした。





副部長ラスカル・堀の家は母子家庭で母親の静子との2人暮らしだ。


ラスカルの子供の頃に父親の不倫のために離婚したことが原因で彼女は母親の細腕1つによって育てられてきた。


母親の苦労を知るラスカルも学費捻出のために御影でも超有名なパン屋「ケーヒニッツ・クローネ」でアルバイトをしていたほどである。


スーパーマーケットのパート勤務から帰ってきた母親は机に向かって何かに集中している娘に言った。


「ちょっとあんた、さっきから何をぶつぶつ言ってんの?それ、お経かなにか?」


「あー、お母さんお帰りなさい。お疲れ様でした。これはカタカムナ・ウタヒと言ってね、これを唱えるとミスマルノタマっていうのが纏えるようになるのよ」


「そう。でもそのミスマルノタマとやらを纏ったらなにかいいことがあるの?」


「いいことがあるどころの話ではなく日本中いろんなところにタダで行くことができるんだよ」


「へー、そんなことができればいいよね。夢があるわね」


「そうなの。だから毎年仙台のお墓参りに行く時もこれからは旅費がかからなくなるのよ」


「それは魅力的ね。ぜひ早くお母さんを仙台に連れて行ってちょうだい。応援するわ」


「それに私が行きたかった琉球大学も下宿しなくて神戸から通うことができるわ。私は沖縄のユタの勉強がしたかったのでこれで夢が叶うわ」


「そうね。それが本当ならとても助かるわ」


「というか、お母さんもこのカタカムナウタヒを一緒に覚えない?」


「いいわね!覚たら日本中が旅行できるのよね。私の夢だった日本一周旅行が叶うのね」


「日本中どころか世界旅行も可能だよ」


「本当?お母さんいちど海外旅行に行ってみたかったの」


「大丈夫よ。これを覚えたらいつでも世界旅行に行けるらしいわ」


「わかったわお母さんもパートから帰ったら必ず唱えるようにするわ。さっきのお経みたいなのを唱えるだけでいいの?」


「そうなの。後輩のメグが言うには心を込めて唱えるだけでいいって言ってたわ」

ラスカルは母親に1枚の紙を渡した。


「これを心を込めて唱えてね」


「そんなに難しい言葉ではないわね。わかった、お母さんがんばるわ」


「あ、私はメグたちの約束で10人の人に今からSNSでこの情報を拡散しなければいけないから、それが終わったら寝るわね」


「そう、無理しないでね。おやすみなさい」


「はい、おやすみ」

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