第48話 神戸ドリーム観光 株式会社

話は逆戻って前日の夜

播磨の家にて


ねずみ男播磨の父親は神戸ドリーム観光という従業員20名ほどの旅行会社を経営していた。

会社と自宅は併設している。


神戸ドリーム観光は神戸ではJTBなどの大手旅行会社に次ぐ準大手として播磨の祖父の代から営業している歴史ある会社であった。


社長室内


「正男、その話は本当だろうな?まさか俺をからかっているのではないだろうな?」

社長室内では播磨の父親である播磨豊がネズミ男を詰問していた。


「ほんとだよ親父、実際に俺はその瞬間移送によってお化けトンネルから渦森山まで往復で行ってきたんだから間違いないよ」


「もしもそんなバカな話を信じて行動した後でウソだったら大人の世界っていうのはいったん失った信用は戻らないんだぞ」


「そういうこともわかってるよ。その上でこれは親父に最高の良い話を持ってきたと思ってる。もし嘘だったらほんとに潔く腹を切るつもりだ」


「わかった。腹を切るか・・・そこまで言うなら信じてやる。しかしもしお前の話が本当ならこれはドえらいことになるぞ!」


「そうなんだ親父。これで親父の会社も一躍世界で有名になることができる」


「しかしその瞬間移送のライセンスは誰が持ってるんだ?」


「ライセンス・・・メグと言う新入部員だ。しかし親父、先輩である俺が頼み込んだらライセンスは俺のモノになる」


「本当か!我が社の独占が出来るのか?」


「ああ、メグは俺の言うことならなんでもきくからな」

適当なことを言うネズミ男。


「流石は我が息子。よし全面的にお前を信用する。おーい、全員集合だ」


と豊は社内で残業していた20名の社員を集めた。

全員「なんだろう?」という顔つきで集まってきた。


「みんな夜分までご苦労様さま。ちょっと聞いてくれ。信じられない話だろうがなんでも息子が言うには瞬間移送装置ができたらしい。しかもそれが使えるのは今のところこいつを含めて3-4人だと言う」


「瞬間移送装置?」


「社長、気は確かですか?」


「アニメやSFに出てくるあれですか?」


「まぁまぁ、だいたい予測した反応だ。詳しい話は今から息子の正男にやらせる。おい正男、お前から直接みんなに説明してやれ」


「わかったよ。父さんちょっとホワイトボード借りていい?」


とねずみ男はペンを持ってメグに会ってからの今までのいきさつを20人の社員に詳しく話し出した。



「えー、社長まさかそんなヨタ話を信じるんですか?」


「ばかばかしい」


「おとぎ話じゃああるまいし」


貧相な面持ちのネズミ男が説明したのが悪かったのか、各従業員から否定的な言葉が飛び出してくる。

それはそうである。

あまりにも常識からかけ離れた話が社長の息子の口から出たために全員が呆れた口調だ。


「でも・・・もしそれが事実なら我々旅行業者にとっては1番のコストの運賃がゼロになるわけですよね・・・」


しかし中には建設的な発言をする従業員が出てきた。


「その通りだみんな。こいつの話によるとこのシステムは日本中の神社に瞬時に行けるらしい。ちょうど今わが社が取り組んでいる島根の出雲大社ツアーや大分の宇佐神宮ツアーなども全部コストがタダになる」


「幸い世の中は若い女性を中心とした神社仏閣巡りが流行になっているので渡りに船ですね」


「そうですよね、我々中小の旅行会社は常に大手の旅行会社のコスト削減方式にはついていけない時代になってきましたから、本当だったらこれは朗報です!」


なんとなく社内が否定的なムードからこの装置を使っての建設的な発言を機に肯定モードになっていた。


「よし、大体みんなの意見は聞いた。みんなの信じられない気持ちは俺も同じだ。しかしもし本当だった場合を仮定して今から移送装置を使った格安旅行をプランニングしてみてくれ」


「わかりました。これは夢があって面白いですね」


「そりゃそうだよ、わが社の名前は神戸ドリーム観光だからな。明日実際俺が息子とその現場に行って事実かどうかを確かめてみるつもりだ。全員解散!」


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