第44話 摩耶 初ジャンプ

「ほな摩耶はん、初ジャンプしに一緒にトンネルに行きまっせ」


「はい、お願いします」


「僕も行くんだナ」


星と秀と摩耶は3人でお化けトンネルに向かって行った。


目的は摩耶のテストジャンプのためである。


「ねえ、秀くん星くん。私のミスマルノタマ今も見える?」


「あー、さっきからちゃんと見えてまっせ」


「これぐらい見えてたら大丈夫なんだナ」


「私でもちゃんと瞬間移動できるかしら?自信ないな」


「そのためのテストジャンプや。まかしときなはれ」


そうこうしてるうちに3人は国道2号線のお化けトンネルの入り口に着いた。


時刻は7時半を過ぎているので怪奇現象が起こると噂されているこのトンネルを夜に使う生徒は皆無である。


「今なら誰もおらへんからさっさとテストジャンプやりまっせ」


と秀はどんどんトンネルを降りて摩耶を中央に導いていく。


「ほな、メグはんからもらった水晶出してんか」


それを聞いて摩耶はポケットからさきほどメグにもらった水晶を取り出した。


「スマホでこのサイトにアクセスして、行き先の鳥居の付近に人がいないことをまず確認してほしいんだナ」

星がサイトのアドレスを摩耶に教えた。

いつの間にか星は着地点の様子が確認できるサイトを立ち上げていた。


「このサイトでいい?」

「うん、そのサイトで現在の鳥居付近の様子が確認できるんだナ」


スマホの画面には周りに誰もいない現在の鳥居の風景が写っている。


「今は誰もいないようね」


「このようにしてまずは着地点に誰もいないことを確認して装置を起動してほしいんだナ」


「了解です」


「摩耶はん、念のためにもう一度ここでミスマルノタマと3回唱えて欲しいんや」


彼女は言われたとおりぶつぶつとウタヒを3回唱えた


「おー、ミスマルノタマがさっきよりも輝いて見えまっせ」


「そう?」


「最初はワイらが付き添って行きますさかい安心してや」


「さあ、行くんだナ」


そう言って水晶を持った摩耶の両肩に手を触れる2人。


「ほな、行きまっせ。そのままゆっくり歩いてんか」


指示どおりゆっくりとお化けトンネルの中央に歩みを進める摩耶。


「じゃあ、行くわよ」


「了解、良い旅を祈るんだナ」


そう言って摩耶が何もない空間に水晶を突き出して一歩前進した。


すると小さな渦巻きが起こり摩耶と2人の姿は一瞬にしてかき消えた。


と同時に3人は暗い渦森山の中の鳥居の下に出てきた。

眼下に見える神戸の夜景が美しい。

六甲山からの強い風が摩耶の長い髪をなびかせている。


「できたわ・・・」


「おめでとうはん、ジャンプ完了やな」


「うまくいったんだナ」


テストが無事できたことに感動と喜びで一杯の摩耶に2人はハイタッチをした。


「ほな練習やさかい、もう一回トンネルに帰りまっせ」


「わかったわ」


と摩耶はスマホを取り出してお化けトンネル内に人がいないかどうかを確認した。


「今はトンネル内には人はいません。いきますよ、肩につかまってください」


もういちど水晶を突き出して3人は一歩進む。

また小さな渦巻きが起こり摩耶と2人の姿は一瞬にして消えた。


どうやら元のトンネルに戻ってこれたようだ。

配線の切れかかった蛍光灯が明滅している。


「よっしゃ、完璧や。これからはもう一人で行けまんな」


「今のところ全く問題ないんだナ」


「わかったわ。今度は一人でやってみる」


「了解なんだナ」

そう言ってもう一度水晶を突き出した摩耶の姿はもうそこにはなかった。


秀はスマホを取り出して目の前から消えた摩耶の番号に電話をした。


「摩耶はんどうでっか?ちゃんと1人で行きましたか?」


「はい!あなた達が言ったように何も問題なかったわ。今さっきの鳥居の下にいます。今日はこのまま歩いて家に帰ります」


「成功なんだナ」


「よかったやおまへんか。これで明日から自分一人の力で瞬間移動ができまっせ」


「そうね、とても嬉しいわ!2人とも協力ありがとうね!おやすみなさい」


「ほな、おやすみな」


「おやすみなんだナ」


秀は電話を切ってメグにメールをした。


「摩耶はん、テスト完了。全く異常なし」

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