第10話 ハンバーガーショップ「ウイング」
「超自然科学研究部ってなんやねん?」
「長ったらしい名前なんだナ」
「幽霊やオカルト、UFO、UMAに都市伝説、それに超古代文明なんかを調べるの」
「へー、ケッタイなクラブがおまんのやな」
「ヲタクの集まりなのかナ?」
「そういえば摩耶さんって霊能力があるってそこの坂本さんに聞いたわよ」
メグが指さした坂本の首がすっと縮こまる。
「え、ピー子もう言ったの?ったく、おしゃべりなんだから、しかたないわね。そうなのよ私は小学校時代からこの能力が有名でね。いわゆる『見える』体質なの」
どうやら小動物をイメージさせる坂本は摩耶からはピー子と呼ばれているらしい。
「幽霊はともかくワイらはUFOや超古代文明の解明なら手伝ってやれまっせ」
「そう、ありがとう、全部信じるわ。なんか私もあなた達3人は最初から違うって感じてたのよ」
「え、ワイのなにが違うんねん?」
「秀君はそのコテコテの大阪弁よ!」
茶畑が笑って茶化す。
「自己紹介のときにすぐにわかったわ。私は小さいときから人の背後に霊がついていればそれが普通に見えるの。例えば数学の横田先生には亡くなった息子さんが憑いて見えるわ」
「え、それって凄くないのかナ?」
「みんなそういうけど、小さいころから既にそうだったからもう慣れっこ。でもこの能力でいい思い出がないわ」
「そうなの、だから摩耶っちは小学生のころから『魔女呼ばわり』されるいじめられっ子だったの」
坂本が説明する。
「悲しい話なんだナ」
「で、自己紹介でワイらの背後に何が見えたんや?」
「あなたたち3人の背後には、どういうわけか渦がぐるぐる回るのが見えたの。こんなことは初めてよ。一体何者なのあなたたちって?」
「へへへ、正義の味方なんだナ!」
「ちょっと星君、はぐらかさないでよ。こっちはまじめに聞いているんだから」
「もう少ししたら私たちの正体は教えるわ。心配しないで。とりあえずは人畜無害の元気のいいスーパーウーマンよ!それよりあなたが入った超科学研究部のことをもっと詳しく教えてくれない?」
「え、入部希望?」
「ううん、私はバスケに入ろうかと思っているの。青春はやっぱりスポーツよねっていう理由から。でも掛け持ちもOKなら考えてもいいわね。だから活動内容と顧問の先生を教えて?」
「あ、顧問の先生は今朝の授業で既に会ったじゃあない。日本史の中居先生よ。彼は自己紹介の通り神戸の北区で神楽寺というお寺の住職の息子さんよ」
「神楽寺?あんまり聞いたことおまへんな」
「先生のお父さんは凄い住職さんで全国的にもとても有名なの」
「何が有名なのかナ?」
「超能力よ」
「手を触れずに物を動かすことができるの」
「本当かナ」
「全国的に有名ってことは他にはどんな能力があるの?」
メグが身を乗り出す。
「例えば、ある日、北海道の漁業協同組合の人が陳情に来て『鰊(にしん)が今年は全く取れない』って言ってきたの。だから『どこに鰊がいるのかを教えてくれ』と頼み込んだらしいの。もうこの陳情自体が異常でしょ?」
「それで?」
「住職さんは、『それより、あなたたちはいつもはどこで船を操業しているのか』と聞いて、逆に鰊に命じてそこに行くように指示したらしいの」
「御伽噺ね、まるで」
「するとその後、北海道では鰊が記録的に大量に獲れたらしいのよ」
「お、それ凄いやんけ」
「本当の話なのかナ?」
「それだけじゃあないの、東西冷戦時代に当時の政府の官房長官が来て『ソビエトのミグ25最新戦闘機の情報を知りたい』って依頼したらなんと函館までミグ25に乗ってソビエトのパイロットが亡命してきたのよ。これは日本中にニュースになったわ」
「ベレンコ中尉なんだナ」
「そう」
「中居先生のおとんは鰊も軍人も操れるちゅうこっちゃな」
「中居先生か。日本史の授業も面白かったしカタカムナ文明も研究してたって言うし。色々興味深い先生よね。私好きよ、あの先生」
「でしょ、一度部室に来てゆっくり会ってもらえない?」
「いいわね、是非話がしたいわ」
「お、ええな」
「賛成なんだナ」
「じゃあ、早速今日の放課後に部室に来てね。新校舎の3階一番西の端よ」
「ええ、わかったわ。覗いてみるわ」
「ほなワイもいくよってに」
「後で会うんだナ」
「あー!やばー! 5時間目始まるよー!」時計を見て茶畑が叫んだ。
「ほんまや、こりゃダッシュやな」
「次は現代国語なんだナ」
6人は急いで食器をカウンターに戻して教室に向かって走り出した。
「お姉さんー、コーヒー美味しかったよー、私はメグっていうのよ。これからは時々来るからよろしくお願いします!!」
「ありがとう!みなさん是非また来てねー」
「ウイング」の若い女性店長が笑顔でお化けトンネルに駆け込む6人の背中に手を振った。
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