第48話.契約と別れ
「お兄ちゃん!早く帰ってきてね!」
「お兄さん!頑張ってね!」
「二人のことは任せて、頑張ってきな。」
「ウォン!」
次の日、おばちゃんの宿屋の前で3人に見送られていた。
ウィルも、ここに残していくことにした。
その方が、シャルとクレアも寂しくないだろうしね。
「いってきます!」
『いってらっしゃい。』
まずは市場に行き、食料を買っておくことにした。
その後奴隷商人のところに行く。
日買っておいた奴隷4人と契約を結び引き取るためだ。
俺がこの1ヶ月ですることは主に2つある。
一つ目は村の周辺を探索すること。
村から何km離れたところに街があるかや、危険な魔物が出るところがないかなどを調べるのだ。
二つ目が家の建設である。
取り敢えず、俺や奴隷、研究者の家と鍛冶屋や宿屋は建てたいところだ。
1ヶ月で出来るかは分からないが、俺が強化魔法を使って作業スピードを上げられたら何とかなるのでは無いかなと思っている。
この二つをやらなければならない。
「昨日奴隷を買ったバルトです。受け取りに来ました。」
「バルト様、お待ちしておりました。今奴隷を連れて参ります。」
しばらく待つと、買った4人の奴隷が連れてこられた。
「それでは、こちらの方に契約事項を記入してください。」
渡されたのは奴隷契約と書かれた書類で、真ん中には魔方陣が描かれている。。
俺が決めた契約は3つ。
1.俺を裏切らない。
2.俺に関することを一切口外しない。
3.俺の命令は己の生死を脅かす命令以外従う。
これなら俺に危害を加えられないし、歯向かうこともないからやり易い。
「以上の3つでよろしいですか?」
「はい。」
「それでは、こちらに血印をお願いします。」
針で親指を刺して血を出す。
そして、血印を押した。
奴隷の四人も契約事項に血印を押す。
例え、奴隷は契約事項に不満があっても無理やり押させられる。
そして、押したが最後、契約事項を破ることは出来ない。
血と血の契約は絶対なのである。
もし、奴隷が破ろうとすると身動きが出来ないぐらいの激しい痛みが発生する。
その痛みに耐え破って契約を破ったとしても、その先に待つのは死だ。
契約を結ぶと奴隷の手の甲には紋章が浮かび上がっていた。
これが奴隷の証なのだろう。
「これで契約は終了です。またのお越しをお待ちしております。」
奴隷の四人を連れて店を後にした。
奴隷売買店の外で軽く自己紹介をする。
「俺の名前はバルトです。先日貴族になりました。」
貴族という言葉に四人が驚く。
多分、俺のことが貴族なんかに見えなかったのだろう。
「皆さんにはマラアイ村という小さな村で働いて貰います。最初はラエア指揮の下で家を作ります。取り敢えず、1ヶ月で5軒は家を建てたいと思っています。」
「この人数で1ヶ月5軒は厳しいですよバルトさん。」
建築士のラエアがそう言ってきた。
「俺も手伝いますので何とかなると思いますよ。皆さんは魔法のバッグと金貨1枚渡しておくので、ラエアが中心となって家を建てるのに必要なものを買ってきてください。後、家作りには関係ありませんが、鉄と銅を1kgずつと布団などの生活用品を買ってきてください。金をパクるようなことはしないように。集合場所は2時間後に西門にします。何か質問は?」
「……」
ないようだな。
「それじゃあ、解散!」
四人にお使いを頼み別れた。
俺は俺ですることがある。
俺一人ならマラアイ村まで強化魔法を使えば直ぐなのだが、あの四人も一緒だと強化魔法は使えない。
歩いていくのも時間が掛かりすぎるので嫌だ。
ならば馬車をレンタルするしかない。
無駄な出費だが仕方ない。
馬車のレンタル場は門付近に必ずあるので、集合時間前に行って借りればいい。
だから、お世話になったエルミアさんにまだお別れを行ってないので、ギルドに行くことにした。
「エルミアさん今大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫ですよ。」
ギルドに入ると直ぐにエルミアさんに声をかけた。
「少し、人の居ないところで話しませんか?」
「え?」
この街を出ていくことを告げるなら理由も話さなければならない。
貴族になったなんて、わざわざ周りに人がいるこの場所で話すことてはない
俺達は裏庭に出て話をした。
「どうしたんですか?バルトさん。」
その表情には困惑が見れる。
エルミアさんも、この状況に何かを感じ取っているようだった。
「今日はお別れを言いに来ました。」
「それはどう言うことですか?」
エルミアさんの声には動揺がみられた。
「俺、しばらくこのま街から出て行きます。」
その発言にエルミアさんは驚いていた。
「え!?ど、どうしてですか?」
「実は先日貴族になりまして、自分の領地で暮らすことにしたんです。」
貴族と言う言葉に、更なる驚きを示す。
「貴族にですか!それは凄いですね……でも、領地というのは何処なんですか?」
貴族になれた理由を、野暮に聞かないエルミアさんはさすがだと思う。
「ここから、北西に40km行ったマラアイ村周辺です。」
「マラアイ村……何度かクエストを発注しに来たことがある村なので知っています。でも、マラアイ村はとても小さな村ですよ?そんなところにわざわざ行かなくてもいいじゃないですか!」
ギルド職員なだけあって、マラアイ村のことは知っていた。
かなり小さな村だから知らない人も多いのだ。
「俺はどうしてもその村を大きくしなければなりません。そのためには村に行って色々やらなければなりません。だから、行きます。」
「――今日行かれるのですか?」
「はい。」
「どうしてもですか?」
俺はその問いに力強く答えた。
「はい!」
「そうですか。止めても無駄なようですね。バルトさんならきっとマラアイ村を大きくすることができると思います。だから、頑張ってください。」
「ありがとうございます。」
エルミアさんは、最初は不満げな顔をしていたけど、最後には笑って見送ってくれた。
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