第2話 食事のこと
僕はまだ独り身で、実家暮らしで、万年6号車だから親には迷惑をかけっぱなしだ。
親は、競輪学校に入りたいと言った僕のことを、笑いはしなかった。少し揉めたが、お前のやりたいようにやりなさいと言ってくれた。
どうせダメだと思っていたんじゃないだろうか。いまの僕は少しやさぐれていて、そんな風にしか思えない。
明日からの開催では、少しは賞金なり何なりを手にして帰りたいな、そう思いながら、どこにでもありそうな、だからこそ貴重な食事を摂っていた。
特に栄養バランスを考えたわけでもなく、特にアスリート向きというわけでもない、ごく普通の一般のご家庭の食卓だ。醤油色をした、普通の食卓だ。
僕はこの食事がいちばん好きで、前検日の今日、これから競輪場に向かう足は、あまり軽くはなかった。
両親や弟妹と離れてひとり孤独にあの場所にいるのもイヤだったし、なにより食事がおいしくないのだ。きちんと管理されている食事がおいしくないのは当たり前かもしれないが、一度入院したときの病院食、あれに似ていて、味気ないのだ。
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