紗々 生存報告体解説

気分変調症と発達障害の疑いで病院に通い始めて一年が経った。薬のおかげで調子は良くなったし、ほとんど別人になった。人と関わるようにもなった。「七井さんですか?」と訊かれたら恐らく戸惑ってしまうと思う。どう答えていいのかわからないから。きっと僕は「はい。七井湊です」と答えるだろう。でもその人の指す七井さんと僕のイメージする七井さんは違う。個とはなんだろう?


思うに、個とは外側にあるものなのだ。自分で決められるものではない。値段みたいに一方的に与えられるものであって、捉えた側の飼う心のことなのだ。


久しぶりにこの文体を使った。相変わらず淡白。少なくとも書く分には。この文体には一応ルールがある。倒置法以外は過去形または「〜だ」「〜ある」「いる」「ない」で結ぶ。読点のある文は連続してはいけない。読点のない文は3回までは連続してもいい。大段落二文目がわかりやすい。読点のある文が連続してはいけない。だから【自分で決められるものではない。】を挿入している。これがリズムを作っている。淡白さ。体言止め。体言止めも連続していい。書けばわかる。


僕は僕の文章を美しいと思っていたし、小説家になるんだろうなと思っていた。でも世間のニーズは違った。それに迎合しようとも思えなかった。物書きとしての僕は死んだから、遺産として置いておこうと思う。生存報告体。綺麗な終わり方。午前4時。もうすぐ朝がくる。降る朝。

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