第62話 説明 → 発見

「ごめんね、試したいことは終わったからもう話してもいいよ」


 ふらつく体を槍で支えながら、心配そうな目でこちらを見ながら僕のお願いを守ってくれているふたりに声をかける。


「どうしたの! 具合悪いのりゅーちゃん! 一度帰る?」


 その途端に僕の袖を掴んで心配をしてくるリミに猫耳をモフモフしながら大丈夫だよと伝えてみたけれど、どうやらリミもシルフィも納得してくれていないみたいなので、説明をするために敵が出ないであろう三階層のボス部屋に一度戻って新しいスキルの説明をすることになった。



 だけど、やっぱりというかなんというか丁寧に説明はしてみたけれど、僕自身があんまり理解していないから、ふたりもあんまりよくわからなかったみたい。でも、いまはまだ慣れていないから疲れるけど、危険はないということだけはわかってもらえた。


「ようはガードンおじさんの【気配探知】みたいなスキルってこと?」

「うん、そうだね。ただいろいろ条件も制限もありそうだから父さんのスキルほど使い勝手はよくないかな」

「でしたら体に負担もかかるようですし、使用は控えたほうがよろしいのではないでしょうか?」


 シルフィが僕の体を心配してくれているのに同調して、リミもうんうんと頷いている。確かに父さんのスキルほど使いやすいスキルではないけど、この【音波探知】には父さんのスキルではできなかったこともできるはずなんだ。そのうちのひとつが……。


「でも、このスキルには父さんの固有スキルよりも優れたところがあるんだ。父さんの【気配探知】は【隠密】スキルみたいに気配を消されてしまうと探知できなくなるけど、この【音波探知】は気配を消されちゃっても大丈夫なんだ。極端に言えば透明になる魔法があったとしてもそこにいる(・・)かぎり探知ができるんだ」

「なるほど……透明になってもそこにいるのならば音に影響を与えてしまうのですね」

「うん。でも逆に実体のない幽霊(ゴースト)系のモンスターなんかは探知できない可能性が高いけどね」

「……わかりました。でもお体に負担がかかるような使用はしないでくださいね」

「わかったよシルフィ。僕たちのうち誰かひとりが倒れたりしたら残された人だって危険になっちゃうもんね。気を付ける」


 僕の説明に納得はいかないまでも、このスキルの秘める可能性については理解してくれたらしい。内容はほとんどがタツマの受け売りだけどね。

 気を取り直して四階層に戻って探索を開始する。【音波探知】の常時発動は無理なので、基本的に曲がり角の先などを確認するために短時間だけ発動するようにした。四階層では三階層のジャイアントバットに加えて、スケルトンナイトが出てくるようになった。錆びた剣とかの武器は怖いし力もあるけど、動きはあまり早くないから二、三階層のファングウルフのほうが手ごわいかな?

 だから、本当はそんなにまめに【音波探知】を使う必要はないんだけど、慣れるためには使っていかなきゃね。


 ただ、四階層はシルフィが活躍できる場が少なくて……しょんぼりしているシルフィを見るのがちょっと辛くて困ってるのが問題なんだ。

 この階層だと土の柱も出せないし、スケルトン系の魔物は弓と相性がよくないんだ。スケルトンは骨でスカスカだから狙える場所が少ないし、シルフィの【弓術】はまだレベル二だから、動き回るスケルトンの頸椎とか背骨とかをピンポイントで狙うのはさすがに難しいみたい。


 それにスケルトンが持っているスキルも【剣術1】とか【盾術1】、あとは【鎚術1】とかばっかりで僕たちのパーティにはあんまり必要がなかった。ということでこの階層はさっさと探索を済ませて5階層を目指すことにした。



 それでも四階層の探索には三日ほどかかった。ボス部屋は二日目に見つけていたんだけどね。でも一応作成しているマップは完成させたかったし、もしかしたらあれがあるかも知れないから全部探索することは僕たちの間では確定事項だった。

 そして、スケルトン相手に無双し続けていたリミのレベルが13になり、マップが完成するころそれは現れたんだ。


『みろ! リューマ! とうとうあったぜ! うひょーこれだよこれ! これがなきゃダンジョン探索とは言えないよな!』


 ぎゃーぎゃーとハイテンションのタツマがうるさくて仕方ないけど、実は僕も同じ気持ちだった。


「りゅーちゃん、これって……」


「うん、間違いないよ。宝箱だ」

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