第52話 ダンジョン → 入口
【グギャァ! ギャ! ギャ!】
翌朝、何日かぶりにある程度隔離された場所で休むことができた僕たちはスッキリとした気分で目が覚めた。夜の間にミリやシルフィが僕のところに潜り込んでくるようなドキドキイベントも、残念ながらなかった。まぁ、それは冗談だけど横になって寝れただけでも拠点を作った意味は大きい。
起きたあとは軽く朝食を摂り、武器を点検してから装備して拠点を出てダンジョン前にやってきた。
ガン! ガン!
【ギャギャ! グァ!】
「うん、ちゃんと機能しているみたいだね」
そして、目の前にはダンジョンから外に出ようとしていたゴブリンが3体とコボルト3体が、シルフィの作った格子から手を出して暴れていた。僕たちが来るまでは入り口付近でうろうろしていただけなんだけど、僕たちが視界に入ると襲い掛かろうとしてきた。
獲物が視界に入らなければ敢えて格子を壊そうとかは考えないみたいなので、作った拠点の方の安全性もちょっと上がったかな。
「じゃあ、あれはリミが倒そうか」
集まってきているゴブリンとコボルトは特に欲しいスキルも持っていないので、倒してしまっても大丈夫。そしてこの状態なら槍で突けば安全にゴブリンたちを狩れるから、一番レベルの低いリミに倒してもらうことにする。
「うん、わかった。じゃあ、りゅーちゃんの槍を貸してもらっていいかな」
「いいよ、リミなら大丈夫だと思うけど格子を突かないようにね」
リミはメインの武器を小剣の二刀流でいくことにしたので槍はバッグの中に入れっぱなしだ。わざわざ出す必要もないので僕が持っていた槍を渡す。【槍術】が3まで上がっているリミなので格子の間からゴブリンを突くのは容易いことだと思うけどね。
「じゃあやるね」
槍を構えたリミが、格子から手を伸ばす魔物たちに的確に突きを繰り出していく。適当に突くのではなく、しっかりと急所を狙って一撃で仕留められるようにしているらしく、鋭い突きが放たれる度に魔物達が沈黙していった。
「凄いです! リミさんは槍も使えるんですね」
「えへへ~、おじさんとおばさんにしごかれたからね。はい、りゅーちゃん返すね」
シルフィに褒められて照れているリミから槍を受け取るころには中の魔物たちはダンジョンに吸収されて魔晶を残して消えている。
「お疲れさま。よし、じゃあ中に入ろうか。シルフィお願い」
「はい」
シルフィは一番右側にある格子に手を添えると短く何かを呟く。昨晩打ち合わせておいたとおり、格子の解除と作成に呪文を設定しておいてくれたのだろう。ほぼタイムラグなしで触れていた格子が地面に吸い込まれるように消えた。
「じゃあ先に僕とモフが入るから、リミ、シルフィの順で入って、シルフィはまた格子で塞いでおいてね。モフ、いくよ」
『きゅん!』
僕の足元を駆け抜けていくモフが先にダンジョンへと入っていくと先行して数メルテを走り奥の警戒をしてくれる。よくできた女である、兎の魔物だけど。
警戒をモフに任せ、リミたちが入ってくる間に魔物たちの魔晶を拾う。解体の手間がないのはいいけど【解体】スキルの取得ができないのはちょっと困るか……。余裕があるときは吸収される前の解体を試そう。
「リューマ様、入口は塞げました」
「うん、ありがとう。シルフィになにかあったら出られなくなる可能性もあるから、シルフィは無理しないようにね」
「はい、ありがとうございます」
まあ、シルフィはレベルが一番高いから大丈夫だと思うけど。
「じゃあ、今日は地図の作成をメインに探索していこう。魔物はまず僕が鑑定してスキルの確認をする。【技能交換】したい魔物がいたら指示するからその魔物は殺さないようにしてね。もちろん安全第一だから、危ないと思ったら躊躇しないでしっかりと倒していいから」
「「はい」」
女性陣からちょっと緊張気味だけど、気合の入った返事が返ってくる。これなら大丈夫そうかな。
『きゅきゅん!』
おっとモフの警戒を促す鳴き声が聞こえる。さっそく魔物がきたらしい。このダンジョンで少しでも強くなれるように頑張ろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます