第41話 ポルック村 → 旅立ち
「それじゃあ、行くね」
背中に槍を背負い、腰には剣とアイテムバッグ。防具は村では調達出来なかったけど雨避けも兼ねた革の外套を身にまとっている。
「頑張ってね。リューマ」
「ありがとう、母さん」
微笑む母さんの顔はここ数日のリミの【回復魔法】のおかげもあってすっかり元通り綺麗な母さんだった。ただ1つだけ前と違うのは長かった母さんの髪がベリーショートになったことくらい。髪の毛だけは【回復魔法】でも治せなかったんだよね。
「リミちゃんやシルフィにあんまり迷惑かけないようにね」
「もう! わかってるってば!ちゃんと2人とも僕が守るよ」
「りゅーちゃん!」
「リューマ様……」
僕の後ろで喜ぶリミと、感動しているっぽいシルフィの声が聞こえる。2人共、ちょっとあり得ないくらい美人さんだから絶対絡まれると思うんだよね……テンプレ的に。その辺の対策というか対応はタツマとも充分検討済みだからたぶん大丈夫。
「それよりも母さん、父さんもだけど……スキル、本当にいいの? 困らない?」
「構わんよ。俺も片腕になった以上は鍛え直さなきゃならん、下手にスキルに頼るよりも鍛錬と共にスキルを上げ直した方がいい」
旅立つにあたり、父さんと母さんからいろいろ餞別を貰った。その最たるものが父さんの【槍術5】だった。
父さんの腕はリミの【回復魔法】でも、僕から渡した【再生】でも治ることはなかった。ただ、【再生】の方はなんとなくむず痒い感じがあるらしいので、時間をかければなんとかなるかもしれないと父さんは言ってたけど……
片腕で振り回しずらいということで、父さんが愛用していた迷宮産素材の槍も譲ってくれそうになったけどそれは遠慮した。今回武器がないせいで苦労したのにまた同じようなことがあったら困るし、母さんだって槍は得意だから使い途はあるはず。
父さんは僕の【槍術2】をもう一度片手での戦い方を検討していく中で上げ直すんだって……でもそれはたぶん嘘じゃないけど本当でもない。結局僕は最後まで父さん達に守られてばかりだった。
「私も構わないわ。リミちゃんに【魔術の才】があるというのはここ数日で身を以て理解したからリミちゃんが私の【回復魔法】をそのまま持っていてくれるのはとても安心だわ。うちのリューマをよろしくね。リミちゃん」
「は、はい!」
そう、母さんも【回復魔法2】をそのままリミに渡すことを譲らなかったんだ。それどころかきちんとした詠唱もリミに教えてくれた。詠唱を使っての回復魔法はイメージが補完されるらしく、威力は変わらないけど魔力消費がちょっと減るみたいで魔力総量がまだ多くないリミにはとても役に立つみたいだった。
「本当に金は大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ父さん。食べる物さえあれば、途中で魔物を狩りながら行けばなんとかなるから」
そう言いつつも、本当はすでに先日、深夜に狩人の森まで赴いて4年の間に貯めこんだ素材と魔晶をアイテムバッグに回収してある。どれも大きな価値はないと思うけど、売れば当座の資金にはなるはず。
「フレイムキマイラの魔晶や素材をいくつか持って行ってもいいんだぞ」
「要らないよ。それは村の人達が立ち直るまでの資金にしてって言ったでしょ」
ここ数日、村で亡くなった人達の埋葬や瓦礫の撤去などをしてきたけどやはり、このままこの村を維持するのは難しいという結論になっていた。
そんな時に、いつも行商に来てくれていたトマス爺さんが来てくれたのは本当に僥倖だった。村の惨状に驚いていたトマス爺さんだけど、この話を聞いて1つ提案をしてくれた。
「ポルック村がこの場所で10年以上頑張ってくれたおかげで人類の生息圏が少し広がっておる。西の方は最近魔物の襲来があったらしくいくつかの村が潰れてしまったが、東の方は新しい村が出来てきて人不足で喘いでおる。そこへ皆で移住してはどうかの?」
どうやらポルック村が最前線で魔境からくる魔物を防いでいたおかげで、辺境都市からポルック村までの間にいくつか村が出来ていたらしいんだ。そこなら受け入れてくれるように取り成すことができるとトマスさんは言ってくれた。
村長たちは村の大人たちを集めて相談した結果、移住を決断した。今はたくさんの人が亡くなったポルック村にいるのが辛いというのが村の人達の気持ちだったようだ。
その際の移住にかかる費用をフレイムキマイラの魔晶や素材で賄うという方針だったんだ。それでも僕にも権利があるって言ってくれたんだけど……僕達だけ村の皆と別れて出ていくのにそれを貰うわけにはいかない。
「そろそろ行くね」
そう言って振り向くと、僕と同じように両親と別れを惜しんでいたリミが僕を見て微笑んでくれる。リミも剣と槍を持ち、外套を纏っていて背中にリュックのような物を背負っている。女の子は荷物が多いからね。アイテムバッグに入れてあげるって言ったんだけど……顔を赤くして断固拒否された。
胸元には僕が作ってあげたペンダントがちゃんと光っている。いつかもっとちゃんとしたものを作ってあげたいな。
「ああ、頑張るんだぞ。シルフィ、くれぐれも頼む」
「はい」
シルフィが頭を下げると金色の髪がさらりと風に舞う。その金色の光の中に首に巻かれた緑色のスカーフが見える。このスカーフの下には父さんが、村から犯罪者が出た時の為にと持ってはいたけど使う機会が無かった奴隷の首輪が隠されている。
これは呪具の一種で、主となる人の血と魔力で発動させて装着させると主に逆らえなくなるらしい。せっかく精神支配から抜け出したのにちょっと可哀想な気もするけど、村の人達を納得させるためというのもあるし、シルフィ本人が厳罰を望んでいたということもあったのですんなりと契約は成されてしまった。まあ、だからと言ってシルフィを本当の奴隷のように扱うつもりはないけどね。ただタツマが異常に興奮してるから、悪さをしないように注意しておかないといけないのが面倒といえば面倒。
そのシルフィも、同じように外套を身に付けてリュックを背負っている。外套がないと肩ひもに押し出された大きな胸がさらに強調されてヤバいことになってしまうので人前では外套を取らないようにきつく言っておこう。
その他にはハイエルフとしてあまり金属武器は持たないらしく武器は持っていない。【細剣術】があるのにと思ったので聞いてみたら里にある練習用の細剣は神銀と呼ばれるミスリルの一種で、それなら装備できるとのことで今は母さんが昔魔法修行に使っていた短杖を持っている。
僕、リミ、シルフィ……そしてモフとタツマ。この3人と2匹? が僕が冒険者になるための第一歩を踏み出す瞬間の仲間達だった。
正直不安はある。田舎育ちの僕が街で生きていけるのかどうかとか、ダンジョンの魔物達と戦えるのかとか……
でも、父さん達のような冒険者になりたい! その思いは今も変わらない。
「リューマ様」
「りゅーちゃん行こ」
『きゅん!きゅん!』
『さあ、いよいよだ!行こうぜリューマ!』
うん、行こう。
「では、行ってきます!!」
今回のわらしべ
『 槍術2 → 槍術5 』
『 再生1 → 麻痺耐性2 』
名前: リューマ
状態: 健常
LV: 17
称号: わらしべ初心者(熟練度が同じスキルのトレード率が100%。以降レベルが差1広がるごとに成功率4割減)
年齢: 14歳
種族: 人族
技能: 剣術2 槍術5 棒術3 格闘2 弓術2 風術1 光術2 統率2
威圧2 敏捷4 調教3
解体1 木工2 料理2 手当1 掃除2
行動(水中1 樹上2 隠密3)
視界(明暗2 俯瞰2 遠見2)
耐性(毒2 麻痺2 風2 水2) 火無効5
特殊技能: 鑑定 中二の知識
固有技能: 技能交換
才覚: 早熟 目利き
名前: リミナルゼ
状態: 健常
LV: 8
称号: 愛の狩人(思い人の近くにいるとステータス微増)
年齢: 13歳
種族: 猫人族
技能: 剣術3 槍術3 回復魔法2 水術1 敏捷2 採取3 料理4 手当2 裁縫2
特殊技能: 一途
才覚: 魔術の才
名前: 深森のシルフィリアーナ《通称:シルフィ》
LV: 22
状態: 健常(隷属:リューマ)
称号: 深森の友(木・水・土の精霊と親和性が高くなりやすい)
年齢: 21歳
種族: ハイ・エルフ族
技能: 細剣術2 精霊魔法3(木・水・土) 手当2 裁縫1
特殊技能: 精霊化(精霊と一時的に同化することで大きな力を使うことができる。ただし長時間は要注意)
精霊の道(精霊に依頼して常駐してもらっている場所と今いる場所の精霊の力を借りて道を作る)
才覚: 従者の
名前: モフ(従魔)♀
状態: 健常
LV: 12
称号: リューマのペット兼護衛(リューマの近くにいる時愛嬌+1、ステータス微上昇)
種族:
技能: 蹴術2 槍術2 愛嬌4(+1補正) 跳躍4 毛艶4 敏捷3
冷気耐性2
主人: リューマ
名前: タツマ
LV: 3
称号: 異世界の転生者(スキル熟練度上昇率大、異世界言語修得、****)
へたれ転生者(悪運にボーナス補正、生存率上昇)
年齢: ―
種族: スライム
技能: 採取1
特殊技能: ―
才覚: ―
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