第22話 リミナルゼ → ぷちおこ

「あれ、りゅーちゃん? どうしたのそんなに急いで」


 げ……西門に走り始めた僕に声を掛けてきたのはリミだ。リミも成人を半年後に控えてだいぶん女らしくなってきていて最近はちょっとどきどきさせられることもある。


 もともと猫人族の女性はスレンダーになりやすいらしくて、リミの腰回りは鍛えているのにほっそりとしていて女性らしい。それなのにお尻あたりは丸みが強調されているし、種族的にどうしてもこぶりになりがちな胸回りも大きいとはいえないけど年相応に十分なサイズに育っている。


 っといけない! タツマから余計な知識を引き継いだ上に、タツマ自身からもエロに関してフェチだの美学だのいろいろ教え込まれてしまったから、つい思考がエロ方面に傾いてしまった。

 エロから思考をそらす為に、物凄い勢いで父さんたちの教えを吸収しているリミの鑑定をしてみる。現在のリミは


名前: リミナルゼ

状態: 健常

LV: 5

称号: 愛の狩人(思い人の近くにいるとステータス微増)

年齢: 13歳

種族: 猫人族

技能: 剣術3/槍術3/弓術2/採取3/料理4/手当2/裁縫2/解体1/敏捷2    

特殊技能: 一途

才覚: 魔術の潜在



 はい、結局努力の甲斐なく【剣術】も【槍術】もつい先日、越えられちゃいました。まあ、レベルは魔物と戦っていた僕のほうが高いし、実戦経験やらスキルの多さやらで戦えばまだなんとか勝てるとは思うけど、これで【魔術の才】が開花して魔法までガンガン使いだしたらよっぽど僕よりチートな気がする。


 リミの成長の速さは間違いなく【一途】の効果だと思う。日頃の態度、そしてステータスでこうまで結果を見せつけられたら、本人から直接言われなくても僕って好かれてるんだなぁと気づかざる得ない。もちろん僕もリミのことは好きだけど最初は妹みたいな位置でしかなかったんだけどな……。


 これから一緒に冒険者になるために旅立つって考えるといろいろ期待やら不安やら沢山あるけど……やっぱり最終的には楽しみで仕方ない。これがタツマがいっていたリア充ってやつなのかな。


「ねぇ! りゅーちゃんってば。どうしたのって聞いてるんだけど?」

「ああ、ごめん。ぼうっとしてた。これからまた川に訓練にいくんだけどさ、その前に西門にきたっていう初顔の行商人を見ていこうと思ってさ」

「ふぅん、それでさっきから村がざわざわしてるのか……じゃあリミも見にいこうかな。それ見たら今日はリミも一緒に訓練したいんだけど、いい?」


 別に今日は訓練と見せかけて狩りにいく訳じゃないからリミが一緒でもいいか……父さんとの訓練は流れたけど僕よりスキルレベルが高い相手との訓練という意味じゃリミも条件満たしてるしね……悲しいことに。


「いいよ、じゃあ西門経由で北門にいくけど装備は?」

「本当! ありがとうりゅーちゃん。最近はあんまり一緒に訓練してくれないから嬉しい! 武器は剣なら持っているから大丈夫だよ」


 そういってリミは腰の後ろをポンポンと叩く。リミは片手剣じゃなくて小剣という短めの剣を二本使うから腰の後ろに横向きに鞘を装着している。引き抜くときは両手を後ろに回して同時に二本引き抜けるのが強み。腰にぶら下げる片手剣よりも邪魔にならないし、マントとかを装備すればパッとみは丸腰に見えて相手の油断も誘えるから、素早い猫人族には適正武器だと思う。


 リミもそう思っているみたいで【槍術】も三まで上げたみたいだけど、あんまり槍を持ち歩くことはない。


「了解。じゃあ早く西門にいこうか」

「うん!」


 リミと一緒に西門に向けて歩いていくと少し先でモフが待っていてくれた。頭の上のタツマはモフに『早くいけ! エルフが! エロフがぁぁぁぁぁ!』とかわけのわからない叫び声をあげているが、残念ながらモフは僕の相棒だからタツマのいうことを聞いてあげる筋合いはないらしい。まあ、そもそも念話的なタツマの声をモフが聞こえているのかという問題もあるんだけどね。

 モフを連れて西門にいくと結構な人だかりができていた。そして、一見して男が多い……皆好きだなぁ。


 一応行商人の馬車は門の中には入れてあげているみたい。馬車の影でもぞもぞと作業をしているちょっと小太りの男の人、まあお尻しか見えないんだけどそのお尻の人が行商人なんだろう。さすがにお尻に鑑定をかけたくないからたぶんだけどね。でもエルフの綺麗なお姉さんなら【鑑定】したい。


『おい、リューマ! この位置からだと見えない! エルフを! 俺にエルフを!』


 あぁ! もううるさいなぁタツマは。僕だってまだエルフを発見してないってのに、っていうか人が多すぎるうえに大人が前を塞いでてあんまり見えないんだよね。僕は一旦しゃがむと小声でタツマに話しかける。


「僕が持ち上げるよりも、皆の足元抜けて見にいったほうが確実じゃない?」

『おお! 確かにそうだ! 最近モフで移動することに慣れ過ぎて自分で動くと言う選択肢を忘れてたぜ! じゃあ、ちょっくらいってくる』

「はいはい、もし戻ってきて僕たちがいなかったらいつものところな」

『わかった! いつもの川っぺりだな』


 タツマは嬉々としてモフから跳び下りると人混みの足元をぬる、ぴょん、ぬる、ぴょんとすり抜けていった。あいつもこの四年で随分素早くなったよなぁ。死体しか食べてない割にはレベルもふたつあがってるし、【再生】スキルも再取得していた。


名前: タツマ

LV: 3

称号: 異世界の転生者(スキル熟練度上昇率大、異世界言語修得、****)

     へたれ転生者(悪運にボーナス補正、生存率上昇)

年齢: ―

種族: スライム

技能: 再生1   

特殊技能: ―

才覚:  ―



 それでも悲しいかな、所詮はスライムなタツマだったが一緒に生活している限り特に不満もなくそれなりに異世界生活を楽しんでいるみたいだ。


 さて、と。じゃあ僕も噂のエルフを見てこよう。人混みの隙間を探して右往左往して一瞬見えた金色の光に足を止める。あれかな……

 背伸びをして角度を変えると馬車からなにか大きな香炉のようなものを下ろそうとしている金色の髪の美女がいた。


 おおおおおおお! あれがエルフか! 凄い美人だ。しかも、エルフっていうとスレンダーな人が多いっていう噂だったのにあの人……なんていうか、谷間とか……凄い。

 っと、一応鑑定、鑑定。どうせならスリーサイズとかも鑑定できたら面白いんだけどね。


名前: 深森のシルフィリアーナ


 へぇ、エルフって名前になんか二つ名みたいのが付くのかな。


LV:22


 レベル二十二か……結構高いな。やっぱり行商なんかしてると魔物とかと戦うことも多いのかも。それにしてもあの胸は凄いな、荷物を降ろす時の揺れっぷりが……あ! 駄目だ、あんまりじろじろ見たら失礼だよね。タツマに毒され過ぎだな僕も。さて、残りのステータスは……


「いてててて! ちょっと! どうしたのリミ、耳を引っ張ったら痛いってば!」

「もう充分見たでしょ! さっさと訓練に行こう! ……じろじろ、じろじろいやらしいんだから、もう!」


 結局僕はせっかくのエルフの鑑定結果を確認しきれないまま、ぷうぅと頬を膨らませたリミに引き摺られるように北門へ連行されていく。


『ちょっと……あれ、まず…………ねぇか。あっちのエル……闇……で…配され……。しかも、ありゃあ……』


 距離が離れどんどん小さくなるタツマの独り言に聞こえるかどうかはわからないが『先にいく』と伝えておいた。


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