某なろうにて投稿されていた小説がカクヨムにやってきた。
カテゴリで言えば"勇者にヒロインを寝取られた主人公系小説"である。
『勇者が幼なじみのヒロインを嫁として迎え、主人公がそのヒロインの婚約者でしたが、幼なじみの将来を考えて身を引きました。』
と、概要だけ言えばこれで終わりかねない物語である。少なくとも、歴史の教科書なら年表に一行書いて終わる事象である。
しかし中身を読み進めるうちに、これはそんなカテゴリで語れるレベルではないと気付かされるだろう。現時点では序章しか紹介されていないのでネタバレは避けるが、「手軽にスカッとざまぁ小説」ではないのは確かだ。
努力すればすべて報われ、努力の末に手にした潜在的なチートで無双する、都合の良い奴隷や美幼女系最強亜人を得る…といった夢を、この小説は破壊する。何故なら主人公は無力で、ユニークスキルを与えられてもその使い方が一切わからないためチート無双は全く出来ない根っからの村人であり、覚醒して超絶レベルアップもしないからだ。ひたすらトライアンドエラーを繰り返し、反省し、傷つき、徐々に成長する。所謂ステータス画面等というネトゲ要素も排除されている。徹底的な"現実追及""ファンタジー"である。
タイトルに書いた通り、まさに主人公に主人公補正がないとどうなるかを体現したような小説であると言えるだろう。ハマる人にはとことんハマる。命の重さにリアリティを感じさせるファンタジー小説。LV1村人の成長と苦難を楽しむ勇気のある方には、ぜひ一度手に取って頂きたい。
「な、なかっ!、、、俺ん作品が無かとよォォォ!!!」
『剣聖に裏切られた幼馴染の旅路』の作者は店を飛び出した。「お客さんお勘定ーー!!」と迫る黒服集団は『幻斬撃』でしっかり倒しておいたから大丈夫。
さっきまで中州のガールズバー「ミーア☆ノクターン」で「ワイの上昇加速は一味違うったいぃぃぃ~!」と第1空挺団時代の武勇伝を語り、自作投稿作品をバーのオキニ嬢『♡ユキナちゃん♡』に見せてアピールしていたのはここだけの秘密だぞっ!
某小説投稿サイトから追放処分を受けた作者は、仲間達の支援と"繋ぐ力"によって新たな女神・カクヨムの元へと旅立った。目指すはカクヨム運営ギルドだ。固有スキル『上昇加速ブーストアクセル』を発動させると、作者の蒼き瞳は周囲を睥睨した。
白髪に染め、ブルーコンタクトを入れた『シーナになりきった』作者に同僚や家族、近隣住民の不安は広がる。会う人会う人を『相棒』と呼び『一緒にお揃いん剣ば打たんか?』と謎仲間理論で熱い視線を向けるのは勘弁してほしいよアッシュ。
そんな狂う兄を見て作者の弟は涙ながらに取材に答えた。
弟「うちン兄ヤンが作品消しゃれて狂っちおかしくなりよったちゃ、誰か助けてくれんとね?」
身内の心配を他所に、優雅に派遣型マッサージ店の一番人気嬢、ティーラさんから『癒し手』の施術を受けながら喘ぐ作者。
「難癖ばつくる〇〇〇系某運営など要らん・・・んくっ」
この作品は、運命に抗い、己を殺し、己を貫き通した主人公シーナと作者の末路・・・もとい、旅路を描いた物語である。
(´・ω・`)「もう作品消さんといてや」