22
森を抜けると、そこには緑色の草原が広がっていた。
そこが星を見るための、隠れた穴場と呼ばれる場所だった。
「よし。じゃあ早速準備をしよう」
天文部部長の森川くんが部長らしくそう言った。
雨たちは荷物を広げ、そこから大きな天体望遠鏡の部品を取り出して、それを組み立てて、形にした。
それは、あのおんぼろな部室の中にあった望遠鏡だった。
「結構ちゃんとしているね」
感心した様子で愛が言った。
みんながそんな風にして行動している間、水瀬くんは一人で行動をしていて、草原にシートをひいたりして、作業を手伝いながらも、ときどき、夜空に輝く星を眺めていた。
雨はそんな水瀬くんの顔をじっと見ていた。
すると、ふと水瀬くんが雨の視線に気がついて雨のほうに目を向けた。水瀬くんと目があって、雨はすごくどきっとした。
それから、水瀬くんは雨の近くにやってきた。
「すごいね。ここ」
周囲を見ながら水瀬くんはそう言った。
「星も綺麗だけど、森も、空気も、すごく綺麗だ」
「それだけがこの街の自慢なの」
にっこりと笑って雨は言った。
「そんなことない。もっとたくさん、いいところがあるよ。この街には」
近くにいた朝見先生がそう言った。
天体観測の準備はすぐに終わった。
あとは満天の星空の下で、天の川流星群が流れるのを待つだけだった。
「あ、今、流れ星流れた!」
星空を指差して瞳がそう言った。
「え? 本当?」
森川くんが天体望遠鏡を覗きながらそう言った。
森川くんの横では、東山くんがじっと真剣な表情で、星空を見つめていた。その近くには愛がいて、愛はあんまり流れ星には興味がないようで、雨が自分を見ていることに気がつくと、にっこりと笑って、それから指で星空を指差して、星、綺麗だね、と口だけを動かして雨に言った。
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