いつかは王子様が

 いつかは王子様が!


 そう思って、生きてきた。私にも王子様が現れるって。だから、誠君なんて、目に入らなかったわ。だって、いつも私に意地悪するんですもの。


 いつかは王子様が……


 そう願いながら、青春をテニスに費やし、短大に入って、会社の事務に就職して、何人かとお付き合いをして、何度かお見合いもしたけど、どの人も王子様じゃなかった。

 私よりもあとに入って来た子が、寿退社するのを何度も送り出して……いつからか、お局様なんて呼ばれていたわね。

 

 ……いつかは王子様が。

 

 そう祈ったけど、私には現われなかった。体を壊して、会社を辞めた時、一人で生きて行くんだって、決めたのよ。

 

「いつかは王子様が。そう思っているうちに、こんな、おばあちゃんになってしまったわ」

「僕じゃ、王子様じゃなくて、ただのだしね」

「あなたで充分よ、誠さん」

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