短編小説

星日生

シンデレラと白雪姫

  少女は未明にこっそりと家を出た。


 王子がガラスの靴の持ち主を探しているという。国中を片っ端から、ローラー作戦で探し当てるつもりらしい。


 実はその靴の持ち主こそがこの少女、シンデレラであった。


 シンデレラに王子と結婚する意思などない。残念なことに王子と言えど、シンデレラの好みのタイプではなかった。そもそも魔法使いのおばあさんがタダで連れて行ってくれると言うので、行ったまでだ。


 というわけで、王の使いが来る前にシンデレラは家を出たのだった。


 自分と同じ体格の女の子はいくらでもいるだろうに、どういうわけか未だにガラスの靴が合う子は見つかっていなかった。誰か一人くらい、逆玉に目がくらんで嘘をつく娘はいないのか。誰もかれも正直者で、ぴったり靴が入っても、自分ではないと告白しているのだろうか。


 って言うか、自分が着ていたドレスは十二時になると消えたのに、なぜガラスの靴だけは残ったのか。不思議でたまらない。あの魔法使いのおばあさんが、裏で何か企んでいるのではないか。そういうふうにも思えてしまう。


 どれほど歩いただろうか。


 シンデレラは森の中で、同じ年頃の少女と出会った。


 彼女は白雪姫と名乗った。彼女のところには眠っている女の子に勝手にキスをするチャラ男がいて、その男が自分の所へ来る前に逃げて来たのだと言う。

 シンデレラもまた身の上話をして、それから別れた。


 シンデレラは白雪姫が来た方へ、白雪姫はシンデレラが歩いて来た方へ。


 また森を歩いて、朝日が昇った頃、開けた場所に出た。

 そこでシンデレラはリンゴを見つけた。真っ赤なリンゴはとてもおいしそうだ。夜通し歩いて来たので、お腹が空いている。


 シンデレラは、そのリンゴを手に取った。

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