第121話 新しい日々
「よっと……」
学院内。その中の自分の研究室を、俺は整理していた。
ちょうどアリスを助け出してから二週間が経過。王国は、元の姿を取り戻しつつあった。といっても、まだ二週間しか経過していないのですぐに復興するわけでは無い。
学院は幸いなことに、そこまで今回の騒動の影響は受けていない。
避難させていたホムンクルスたちは無事だが、流石にまだここには連れてきてはいない。現在は、色々と復興の目処が立ったので、フィーや他の職員と一緒に学院の復興をしている最中だった。
本棚は倒れ、床には本がバラバラに散っている。それに、論文をまとめていたファイルも解けてしまっている。それを集めると、一箇所にまとめる。
本棚は錬金術で、その場に立てておいた。今回の復興に関しては錬金術師の助けが必要ということで、実際のところ、高位の錬金術師はかなり駆り出されている。
本当は学院にも早く来たかったのだが、それよりも街の復興の方が優先ということでそちらにかかりきりだったのだ。
また、アリスに関してだが、体調はすっかり戻ったらしい。まだ入院している最中ではあるが、そろそろ退院できるとか。最近は、「毎日来ないと寂しくて、死んじゃいます……」とか言うので、こまめに会いにいくようにはしている。
本人は少しだけ戯けているような感じでそう言っていたが、本当に寂しいのだろう。色々と分からぬまま巻き込まれて、首謀者にしたて挙げられていたのだ。
本人はもちろん、そんなことは全く知らないので、事情聴取はすぐに終わった。中でも、オスカー王子はいまだに行方不明らしい。
「エルー! どう? 終わった?」
「ん? まぁ……ボチボチだな」
「意外……絶対に進んで無いと思ったのに、ちゃんとやってるじゃ無い」
「俺だって、もう子どもじゃないからな。まぁ年齢的にはまだまだ、ではあるが」
「ふーん。昔のエルを知っていると、本当に感慨深いわねぇ……」
その後は、フィーと二人で俺の研究室を整理した。さすがに二人揃うと、あっという間に片付いた。後もう少しすれば、学院も無事に再開できるだろうとの話だった。
「よし。これで大丈夫かしら」
「あぁ。助かる。フィーのほうは終わったのか?」
「私は片付けとか得意だからね。すぐに終わったわよ」
「ま、ここに来ているんだ。当たり前か」
「で、今日も行くの?」
半眼でじっと見上げてくる。それは明らかに、抗議を含んだものだった。フィーは何かと文句を言いながら、アリスの元に行くのについてくるのだが、そこではいつも喧嘩になっているのだ。
といっても、今日も行くと決めているので今更どうしようもないのだが。
「まぁ、いくな。ついてくるのか?」
「……はぁ。行きたくないけど、あの王女と二人きりにはしたくないから」
俺たちは学院を後にすると、病院へと向かうのだった。
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