第114話 君の声が聞こえる
王城内を疾走する。
しかし、一向にアリスが見つかることはない。今回のこの事件に関して首謀者はアリスだと言われているが、こちら側でそれを信じているものはほとんどいない。
特に俺たちに至っては、アリスのことをよく知っている。
王国に反旗を翻そうなどという思想を持っている人間ではないことを知っている。一見すれば、清楚でおしとやかに見えるが……実は悪戯好きで、腹黒い。
そんなアリスのことを、俺とフィーはよく知っている。
だから今回の件については、絶対にアリスが首謀者ではないと信じている。
そして、フィーと共に王城内をめぐるが……一向に見つかる気配はない。
やはりこれは地下にいるのではないか。だが問題は、地下への入り口が見つからないということだ。
「フィーどうする?」
「……地下への入り口が見つからない。うーん。どうしましょうか」
「ぶちあけるか?」
「力ずくで……?」
ゴクリと喉を鳴らして、フィーは俺のことを見つめてくる。すぐに否定しない姿を見て、彼女も色々と考えているのだろう。
俺もまた、ただ無鉄砲にそう言っているわけではない。
自体は一刻を争う。そのため、力ずくでこじ開けるのも手段の一つとして提示しているだけだ。
と、その瞬間……俺は、聴き慣れた声が脳内に聞こえてくる。
『先生……助けて。先生……』
じっと自分のいる場所の下を見つめる。
「エル? どうかしたの?」
「声が聞こえた。アリスのものだ」
「え……でも私は聞こえなかったけど」
「俺には聞こえた。ここだ。この下にいるに違いない」
それは予感。
その事実は俺にしか理解できないだろう。だが、俺には確かな確信があった。
「フィー。ここを打ち破る」
「え……ちょ!?」
フィーの意見を聞くことなく、俺は錬金術で思い切り床をぶち抜いた。すると、この下に広がっているのは……地下空間だった。
そのまま下に着地すると、上にいるフィーにも降りてくるように促す。
「フィー! 降りてこい!」
「深いんだけど! 怖いわよ!」
「受け止めるから大丈夫だ!」
「うぅ……こんなことなら、ダイエットしとけば良かったぁ……」
「大丈夫だ! 重くてもどうにかなる!」
「うるさいわよ!」
覚悟を決めたのか、フィーはそのまま俺に向かって飛び降りてきた。もちろん身体強化をしているので、彼女を横抱きする形でしっかりと受け止める。
「わっ!」
「よっと。ちょっと重いくらいだな」
「もう! うるさい! 早くおろしてよ!」
「はいはい」
腕の中でジタバタするので、そのままフィーをその場に優しく下ろす。
見渡すと、広がっているのは通路だった。
この先は、微かに光が点っているだけで薄黒い。だがアリスはきっとこの先にいる。
それは間違いなかった。
「フィー! いくぞ!」
「ちょっと! 待ってよぉ〜!」
そうして俺たちは地下空間を駆け抜けて行くのだった。
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