第112話 Alice in wonderland 27:終焉
「う……ん……」
目を覚ます。
始めに感じた感触は、冷たい……だった。
「ここは……?」
呆然と当たりを見渡す。そして、私はすぐに理解した。
ここは王城の地下にある牢獄だ。現在は使用されていないが、過去にはよく使われていたという話を聞いていた。
目の前には、鉄格子。頭上から降り注ぐ、月明かり。
服装は、意識を失う前と同じものだった。
でもどうして私は、ここにいるんだろう。
そうだ。確か私は、オスカーお兄様と出会って……そこからの記憶が綺麗に抜けて落ちていた。
そして、遠くから……コツコツと靴の音が聞こえてきた。
「やぁ。アリス。そろそろ目を覚ます頃だと思っていたよ」
「……オスカーお兄様。これは一体……」
鋭い視線では私は彼を射抜く。
しかし、私の視線など意に介していないのか彼はにこりと微笑みを浮かべる。
「ちょうどいいタイミングだった。エルウィード・ウリィスがいない。そして、現在の王国では邪魔をする人間は限りなく少ないものだったからね」
「……まさか、叛逆を?」
この前会ったときのものは、全て演技だったのか。
ギリ、と歯を食いしばる。
元々興味がない相手、ということでその時は特に意識はしていなかった。おそらく、謝罪をして回っていたのは調査の一環だったのだろう。
「ふふ……僕は神からの啓示を受けているんだ」
「何の話を?」
「君には、いや。君たちには理解できる話ではない」
「神、が本当にいるとでも……?」
抗議を込めた声を上げると、彼はキッと私を睨み付けてくる。
「言葉には気をつけたほうがいい。神はいる。僕はこの目で目撃したのだから」
「……」
私はそれ以上、言葉を発することはなかった。
そうしてオスカーお兄様は去っていく。
そこからの日々は、ただ呆然と過ごすだけだった。食事や最低限の身嗜みを整えるものはすでに用意されていた。
別にここで餓死させる気はないと知って、ほっとしたが……やはり私は今の王国の状況が気になっていた。
すでにどれほどの時間が経過したのか。
それすらもすでに希薄。
ただ毎日を過ごし、ボーッとする時間も多くなっていた。
そんな時に思い出すのは、やはり先生のことだ。
彼は今頃、何をしているのだろうか。そんなことばかりをどうしても考えてしまう。
そして、時はやってきた。
「ん……う……ん? 何か音が?」
目を覚ます。
それは城内で爆発音のようなものがしたからだ。流石にそれは無視できるものではなかった。
しばらくすると、多くの足音が聞こえたきた。
そうしてやってきたのは、他でもない。彼だった。
「アリス! 無事だったかっ!!?」
「先生……?」
久しぶりに見る姿に、私は心底安心するのだった。
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