第69話 解き放たれた天才
「フィー、あれを使う」
「
「あぁ……今の俺ならやれる」
そうは言ったが、まだ完全な支配下に置けてはいない。それでも
俺は両目に軽く力を込めると、内側に流れている
「……
瞬間、世界が色鮮やかに変化する。この世界では
右肩……あそこに集中しているな。おそらくあの場所に何かコードのようなものが書き込まれているはず。
「ギガアイイイイイイイアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!」
爆音を出しながら突撃してくるも、俺はそれを上空に飛ぶことで回避するとそのまま右肩の対象に向けて
《
《
《
「さぁ、掻き消えろ……」
宙を舞いながら、俺はゴーレムが搔き消えるのをイメージしていた。だがおそらく、強固な
「フィー! 動きを止めてくれッ!!!」
「もうっ! 注文が多いわねッ!!」
そういうと、フィーは一気に氷を地面から走らせていき……そのままわずかだがゴーレムの動きを止める。時間にして、5秒しか保たないだろう。でもそれだけの時間があれば、十分だ。
《
《
《
《エンボディメント=
「……
瞬間、大量の錬成陣がゴーレムを取り囲むように発生したかと思いきや……それぞれの錬成陣が高速回転をして世界から消える。それと同時にゴーレムの足元に莫大なサイズの錬成陣が出現。そしてそれは……領域全てを煉獄の炎に包みこむ。青白くも燃え上がるそれは、勢いを更に増していき最終的にはゴーレム全てを包み込むほど莫大なものへと膨れ上がる。
「ギガイイイイアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアイイイイイイイイイイッッガアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッッッガガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
煉獄の炎に飲み込まれて、ゴーレムは悲鳴のようなものをあげる。痛覚はないようだが、体の負傷から至る所から体が崩れ去っていく音がする。そしてその錬成陣の外に出ようと試みるが、それは不可能だ。
「エル……何したの?」
「錬成陣を鎖のように繋ぎ合わせて、莫大なサイズの錬成陣を作った。そしてこの領域にはいれば最後、
「……そう。すごいわね……」
フィーが俺を見る目は、すでに人を見る目ではなかった。それは化け物を見る目だ。でもそれでよかった。俺は誰かを死なせるぐらいなら、喜んで化け物にでもなんでもなろう。
「眼はいいの?」
「あぁ、もう慣れた」
「……終わったわね」
「少し確認するか」
崩れ去ったゴーレムのもとによると、そこにはこのゴーレムを維持していたと思われる謎の言語のようなものが書いてあった。
「これは……あの書物にあった文字と同じ系統だな。文法的な意味は不明だが、同じ形の単語が並んでいる」
「ならこれは……」
「やはり魔法の産物だろうな」
そして残ったかけらをじっと見つめていると、全てが急にボロボロと崩れ去っていき……最後には
あの第六迷宮で見たときのように、雪が空に舞っていくような光景だった。
「さて、扉は……」
入ってきた扉、そして出口であろう扉の開閉を待つが……どうにもおかしい。ここの守護神であるゴーレムの破壊に成功したというのに、一向に扉が開く気配がないのだ。
「ねぇ、開かないんだけど」
「開かないな」
「閉じ込められたの?」
「そういう意味では、迷宮に入った時点で閉じ込められたようなもんだけどな」
「もう! そんなことを言ってるんじゃないの!」
「はてさて、どういうことか……」
そう考えていると、急にギギギギギギィと音を立てて扉が開かれる。
「時間差なのかしら?」
「それにしては長いな。別のギミックがあったとか?」
「そうかもしれないわね。でも開いたからいいじゃない。いきましょう」
「……」
思索に耽る。俺はどうにもこの現象がただの遅延だとは思えなかった。迷宮はロストテクノロジーの一種で、魔法によって構成されている。魔法とは錬金術を超える技術で、概要が不明。だからこそ、何事にも意味があると俺は思っている。
第六迷宮では遅延などなかった。倒した瞬間には、扉が開いていた。それに第五迷宮でも魔物によって迷路が構成されていることも分かった。そんな様式を持っている迷宮がただの遅延?
そんな言葉で済ませていいのだろうか?
「エル、何ぼーっとしてるの?」
「……あぁ、すまん」
フィーに急かされて俺はとりあえずその疑問を横に置いておくことにした。
「いずれ分かるか……」
そう呟いて、俺たちは十一層へと降りていくのだった。
◇
「はぁ……こんなにぐるぐる回ってばかりで頭がどうにかなりそう……」
「そう言うな。どうしようもないことだ」
「その目でなにか分からないの? 一層にいた時は分かったじゃない」
「十層を過ぎてから、ジャミングが酷すぎる。下の階に何があるかもしっかりと見えない。おそらく下に行けばいくほど、
と、二人で色々と話しながら進んでいると……何かが泣いているような声が聞こえてくる。
「うっ……ううううう」
泣いている……のか?
「ねぇ、エル。聞こえるよね?」
「泣いているな。行こう」
「ちょ、ちょっと!」
フィーが静止するのを無視して、俺はその場所に向かった。するとそこには壁の中に牢獄のようなものがあり、その中には一人の女性がいた。
「うん、罠だな」
「罠ね」
「行こうか」
「あぁ」
あからさま過ぎる。おそらく人に化けた魔物だろう。この世界にはミミックという魔物がいて、様々な生物に化けて捕食を行う奴がいる。今回はその類だろう。
「ちょ!? お話だけでも! お話だけでもおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ちらっと振り返ると、俺は疑問に思ったことを口にする。
「話したぞ」
「そうね」
「ミミックって話せるか?」
「いえ、確かあれは人間にも化けれるけど言語は話せないわ。せいぜい、泣いたふりぐらいよ」
「ふむ……迷宮特有の特殊なミミックか? しかしそう考えると、知性を持った魔物ということになる。前々から知性が宿っている魔物はいると思っていたんだ。さて、奴らの言い分でも聞いてみようか」
「えぇぇ……なんか、無駄に美人でムカつくんだけど……」
「それもまたミミックの能力なんだろうな。男に媚びる……全く、いい能力だな」
「はぁ……ま、話ぐらいはしてみましょうか」
二人でトボトボと戻ると、そこにいるミミックに話しかけてみた。
「おい、ミミック。会話はできるのか?」
「で、できます! でも、私はミミックではありません! 人間です!」
「本当にぃ?」
「本当です!」
「ねぇ、エル。ちょっと痛めつけてみましょう」
「拷問か? 俺はモンスター相手でもいたぶるのは嫌だぞ」
「大丈夫、大丈夫。ちょっと電撃をビリビリさせるだけだから」
「まぁ、それなら……」
「ちょ、ちょ、ちょっと! 何を考えているんですか!? 電撃を流す!? 拷問じゃないですか!?」
「まぁちょっと痛いだけよ。別にその美貌に嫉妬してるわけじゃないわ、決して」
「え!? ちょ!? 聞き捨てならない言葉が!? あ、あががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががが!!!!!!!」
次の瞬間、女は体に電気を流されているようで奇妙な声をあげる。と言ってもこの程度なら別に少しピリピリする程度だろう。
そしてしばらくして、女は地面に手をついて「はぁ……はぁ……」と息を漏らす。
「うん、人間みたいね」
「だから言ったでしょ!!?」
「ぶっちゃけ、俺の眼で見れば一目瞭然だったけどな」
「うん知ってた。でも恐怖心を植え付けるのも大切かなーと思って。まだ怪しいし」
「……ぐす、本当に泣けてきました……」
「で、お前は誰だ?」
「私は……」
そして女は自分の素性を語り始めるのだった。
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