3-24 コンビネーション・クレイモア【2】
コイントスによって、「キン&リンリン」チームが先攻になった。
俺たちは、先に地雷原を歩いていくことになる。先攻と後攻、どちらが有利なのかは判断が難しいところである。
話し合いの結果、第1ターンは俺が「設置人」を、リンリンが「
「スイープ&ゴトリア」チームは、スイープが「設置人」、ゴトリアが「
「いいか、ゴンヘル!俺の思考をしっかりトレースしろよ」
「勿論です、兄貴!兄貴の考えを完璧に読んで見せますよ、兄貴!」
「いつも通りやればいい、ミスんじゃねぇぞ!」
「最高ですよ、兄貴。兄貴は兄貴の中の兄貴だ」
「行くぞっ!」
「兄貴っ!」
2人は気合いを込めて、そんな無意味なやり取りをしていた。
俺は、リンリンの方を見つめる。
「じゃあ、行ってくるよ」
「うん、行ってきて」
そんなシンプルなやり取りを交わして、拳を突き合わせた。
死んでも勝つ。そう、心に誓って。
********
「設置人」の俺とスイープは、地雷の位置を選択するために、それぞれがパネルのある空間へと行く。
当然、俺もスイープも相手がどこに地雷を埋めているのかを知るすべはない。
今、地雷を埋めている位置を知っているのは世界中で俺、ただ1人だ。
「設置人」は、味方の「
実はすでに俺は、地雷をどこに埋めるかのあたりをつけていた。
これならば、事前の打ち合わせがない状態でも地雷の位置はリンリンに通じるはずだ。
俺は、「12」「8」「19」の順番でパネルに数字を入力していく。
地雷位置の選択が終わった「設置人」には、もうここでやるべきことはない。
俺は、地雷の埋まったフィールドへと戻っていく。
ほぼ同じタイミングで、スイープも顔を出した。
俺は地雷選択をかなり早く終わらせたので、スイープもあらかじめ数字を決めておいたんだろう。悩んでいる様子は一切なかった。
「
なんでもいいから何かヒントを得ようとしているんだろう。
現状では、一切の手がかりがないはずだ。
ただの運勝負になってしまう。
1/2で勝ち負けが決まるだけのギャンブルなんてものは、この場にいる誰もが望んでいない。ありとあらゆる手段を使って勝ちにいきたいのだ。
このゲームでは、「設置人」がしゃべることが禁止されていない。
つまりは、何かしらのメッセージを「
例えば極端なことを考えれば、今俺がここで全体に対して、俺が選んだ数字の「12」「8」「19」を声に出して伝えることができる。
勿論、そんなことをすれば敵チームの「
ただし相手チームにメッセージが伝わる前提で、リンリンにしか意味が解読できない何かを伝えられれば、味方チームにだけ地雷の位置を教えることができる。
「
「リンリン、「29」と「31」の間だ。俺はそこに地雷を仕掛けた」
俺はこの場にいる全員に聞こえる声量で、リンリンに対してメッセージを伝えた。
「「29」と「31」の間?」
リンリンは不思議そうに聞き返してきた。
事前の打ち合わせは何もできなかったのだ。すぐにはわからないかもしれない。
でもリンリンは、ここから地雷の位置を導き出せるだけの知識を持ち合わせているはずだ。
リンリンは悩んでしまっている様子であった。
相手チームのゴトリアも、俺のメッセージを解読してやろうと考えているようである。
ゴトリアが先に地雷の位置に気づく可能性はかなり低い。そんなメッセージの内容にした。
俺はリンリンを信じて待つだけだ。
リンリンに伝えるべきことを伝えたので、俺は敵チームの「設置人」のスイープを観察する。
スイープもまた、俺とリンリンにわからないように、ゴトリアにメッセージを伝えるはずである。
そうしないと、ゴトリアは6個全ての地雷の位置がわからない状態で、地雷原を歩かなくてはいけなくなる。
ところが、ここで異常なことが起こる。
正確に言うと、何も起こらないという異常事態が発生した。
地雷の位置を選択した後のスイープは全くもって動こうとしなかった。
明らかに、何のメッセージも発していない。
言葉ではなく、動作によってメッセージを発しているとか言うわけでもない。
そこから読み取れるのは「無」だけであった。
そんなバカなことがあるはずがない。
まさか、何も伝えていない状態で「
「さぁ、お前らのチームが先攻だ。「設置人」は数字を選択しな」
スイープに促されたリンリンは、数字のマスへと足を進めていく。のろのろとした歩調であり、どの位置に地雷が埋まっているのか、ひとつもわかっていないのは明らかだ。
もう少しリンリンにヒントを出すべきか?
しかしヒントの量を増やすことは、そのまま敵チームに俺の地雷の位置を気付かれる可能性を高めることに直結する。
できれば、このままでいきたい。
ここでの数字の選択はリンリンの強運に任せて、次のリンリンの番が回ってくるまでに、メッセージを読み取ってくれるように賭けたい。
強運に任せる。
その考えが甘かった。
ふらふらと地雷原をさまよったリンリンは、何と「8」のマスの前で足を止めた。
そのまま、「8」のマスを踏もうとする。
「8」は俺たちの地雷が埋まっているマスだ。
やはり、リンリンにはメッセージが伝わっていなかった。
俺たちのチームは大ピンチであったのだが、ここでリンリンはファインプレーをする。
リンリンは俺に向かって確認をした。
「キン!「8」を踏んでいい?」
リンリンは堂々と、「8」のマスがあたりかハズレか聞いたのだ。
常識的に考えれば、テスト中に教官に答えを尋ねるようなものであり、絶対に許されない行為だ。
しかし、”コンビネーション・クレイモア”でこの行為は禁止されていない。
「設置人」に答えを聞けるのだ。
「「8」は......、だめだ」
俺はリンリンに対して、正直に真実を伝える。
これは2つの意味で、ゲームを不利にする行為であった。
1つ目は「8」のマスに地雷が埋まっていることを敵チームにも知られてしまうこと。
敵は「8」のマスの地雷を絶対に踏むことはない。俺たちの地雷は3個中1個が無効化されてしまった。
2つ目は、敵チームに俺のメッセージを解読されるリスクがあがることである。
俺のメッセージ『「29」と「31」の間だ』の答えには、3つの数字が隠されている。
そのうちのひとつ「8」が敵に伝わってしまったのだ。これは、メッセージを解読するための大きな手がかりになってしまう。
それでも、自分のチームの地雷を踏んで「2pt」失うよりかは遥かにマシである。
俺たちのチームは、リンリンによって救われたのだ。
「8」がダメだとわかったリンリンは、隣のマスの「7」へと移動する。
リンリンは「7」はどうかと、俺の顔を見ることで問いてきた。
俺は首を縦に振って、問題ないことを伝える。
「7」には俺の地雷は埋まっていないために、敵の地雷を踏むリスクしかない。
リンリンは、勢いよく「7」のマスを踏んだ。
結果は......、何も起こらない。
セーフだ。
「
さて、続いてはゴトリアの番である。
後攻の敵チームは、ここで何かしらのメッセージを発するのではないのかと思った。
今のタイミングなら、リンリンに一度、マスの選択をさせた後で地雷の位置を伝えられる。
ところが、スイープは全くもって動こうとはしない。
ゴトリアからも何かメッセージを受け取ろうとの姿勢が見られなかった。
これじゃあ、何も解読のしようがない。
「
俺の所作から、地雷の位置を探ろうとしているのだろ。
そんなことはさせまい、と俺は微動だにせずに、ゴトリアの動きを見守った。
最終的にゴトリアは「16」のマスの前で足を止め、マスを踏んだのであった。
結果は、無反応。セーフである。
第1ターンの最初の数字選択は、どちらの「
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます