第4話けもみみ少女とひねくれ少年

頭は良くない。


でもこれくらいはわかる、こいつの耳は人間のものじゃない。




『え!?あ!そっちでは種族は1つしかないのか!』




事前リサーチくらいまともにしろ、ましてや勝手に連れてくるだから以前の世界との違いくらいまとめとけよ。




『うん。まぁ事前知識もあるし大体想像ついた説明しなくていいや』


『事前知識!?君賢いんだね!』




俺の言動にオーバーすぎるリアクションで答えてくれる。初対面など相手に気に入られるためにはこんなものだろうつまらない人間だと思われるよりはマシだ、みんなそうだろ。




『この世界には6つの種族がいるの!まぁいま説明しても覚えにくいだろうし、後で説明するね!』


『OKとりあえず君みたいな種族はなんていうの?』


『こんな感じの耳をしている人たちを耳族って呼んでるよ!』




そういうと耳をぴこぴこと愛らしく動かしている。わかりやすくするためなのだろうが、こちらとしてはあざとく感じられて仕方ない、実にけしからん。


そしてお約束のことを聞く。




『さわってもいいか?』


『え!?そっちの世界では初対面でも異性のあたまをさわるの!?』




当然の答えが返ってきたため安堵すると同時に少し悲しかった、自分の浅はかさが。


動物は好きなほうだ、いつも素直で感情に裏がない従順さは時に申し訳なくなるほどだ。


耳触りたかった。




『ごめん冗談。他種族を初めて見たからね、少し舞い上がっちゃた』


『へ、へぇ、そんな感じに見えないけどね?笑』


『いやいや、普通の高校生ですから笑』




異世界に来ても俺は本性を隠し好かれそうな自分を演じ、まっとうな台本をこなしていくのか


こうは思うが悲しさなどない。好かれるために多少の嘘をつくのは当たり前だ好かれるためなのだから悲しさなど生まれるわけがない。




『そういえば【想い】が力になる?とか言ってたよね、君にも力?があるの?』


『いやーさすがにないかな笑


【想い】なんて簡単そうに言ったけど実際すごくむずかしいの!だって簡単に能力が手に入ったら悪い人だらけになっちゃうし...』


『そりゃそうか』


『【想い】が力になるくらいだからね、まず【想い】物凄く強くなくちゃ話にならないよ笑』


『シロの想いが弱いんじゃない?笑』


『そんなことないもーん!!失礼しちゃうよ君は!!笑』




よし、もうきつめの冗談も言えるな。




『まぁあとすぐに聞きたいことは1つかな、今からどこに向かうの?』


『えーとねここから1番近い私の国、スピカルだよ!』


『ん?』


『ん?』




すごいねシロは国を持っているらしい。

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