第4話



「……女だったんだ」

「女だったんですね。ここで一旦流れが変わりそうですね」




198 名無しの権兵衛

 え? 女


199 名無しの権兵衛

 嘘だ


200 名無しの権兵衛

 女……。俺っ子だったてことか


201 安価好き

 ほんと



 200ゲット……できなかった


202

 安価好き。狙うな


203 安価好き

 一度は取りたい


 それよりいつから俺を男だと思ってたし


204 名無しの権兵衛

 最初からだし


205 名無しの権兵衛

 だってな


206 名無しの権兵衛

 安価好きのスッペク見てきた。DKともJK書かれてなかった


207 名無しの権兵衛

 マジか……


208 名無しの権兵衛

 騙された……


 つうか、もう安価好きとAが付き合えば良いんじゃ


209 名無しの権兵衛

 あ、それ良い案じゃん

 安価好き、Aのこと好きそうだし、Aもメール見る限りまんざらでもなさそうだし


210 名無しの権兵衛

 いいな、それ


211 安価好き

 良くない。

 Aのことは好きだけどBから奪うつもりないし。そもそもAとは幼なじみで恋とかそんな感情はない


212 名無しの権兵衛

 チッ


213 名無しの権兵衛

 チッ


214 安価好き

 舌打ちするな


 さきAにそれ勘違いって返信送った。返ってきたのはこれ

 


 そうなのか? ならBに悪いことしたな



 これはと思ってじゃあ、より戻すって送ったら、それはもう絶対ないって返ってきた


 どうして……しょぼーん


215 名無しの権兵衛

 おう……


216 名無しの権兵衛

 どうしてだーー


217 安価好き

 二人が仲直りしてくれないと……、俺……


218 名無しの権兵衛

 泣くなよ……

 何とかより戻させるよう頑張ろうぜ


219 名無しの権兵衛

 そうそう


220 名無しの権兵衛

 でも、本人が絶対ないって言っているのにできるのか


221 名無しの権兵衛

 こら、そんなこと言わないの>220


222 名無しの権兵衛

 安価好きが泣いちゃうでしょ


223 安価好き

 (泣)


224 名無しの220

 ご、ごめん。ちゃんと考えるから

 ど、ど、どうしようか


225 名無しの権兵衛

 安価好きが泣いてよりを戻してて頼んだら戻してくれたりして


226 名無しの権兵衛

 確かに


227 安価好き

 ほんと、なら、やる


228 名無しの権兵衛

 いや、それでよりが戻ってもまたすぐに別れるだけだぞ


229 名無しの権兵衛

 そうだよな


230 安価好き

 なら、駄目……


232 名無しの権兵衛

 なぁ、先から思ってたんだけどよ、AとB絶対よりを戻させなくちゃ行けないのか


233 名無しの権兵衛

 そりゃあ、安価好きが望んでるから

 

234 名無しの権兵衛

 でもさ、本人達が望んでないのにより戻しても意味ないんじゃないかな

 安価好きはどうしてそんなに二人のよりを戻したいんだよ


235 安価好き

 ……………………


236 名無しの権兵衛

 安価好き・


237 名無しの権兵衛

 どうした?


 何かあったか


238 名無しの権兵衛

 言いたくない事か?


239 安価好き 

 ううん。ただ、ちょっと……


240 名無しの権兵衛

 安価好き?


241 安価好き

 ……もともとBはAのことが好きで俺と友達になってくれたんだ。

 Aと親しい俺と友達になって接点作りたかったんだ。だからさ、AとBが別れたらBが俺に親しくしてくれる理由がなくなるんだ。友達じゃいられなくなるかも




「書き込みがなくなったな」

「どう書けばいいのか分からなくなったんでしょう。……それに」

「それに」

「だいぶ薄れていたのに、妖怪にまた引きずり込まれ始めている。早くしないからですよ」

「俺のせいかよ」

「ええ。先からずっと見ているだけだったじゃないですか」

「どう書けばいいのか分からないんだよ。引きニート舐めるな。人の慰め方なんて知るわけないだろう」

「はいはい。みんなが固まっているうちに書いて」

「へーーい」



242 名無しの権兵衛

 そう言うものなのか?



「疑問ですか」

「だって仕方ないだろ。友達とかいた事ないから、こう言うのが普通なのかも分からないんだよ」

「成る程。それは僕にも分からないな……。すくなくとも理想ではないように思えるけど」

「ていわれてもじゃあ、それが何かは俺には分からないけどな」




243 名無しの権兵衛

 そういうものって理由がなくなるってところにか?


244 名無しの権兵衛

 うん。そんなに簡単に友達って居なくなるものなのかな


245 名無しの権兵衛

 確かに……

 でも、あんまり想像できないけど女子の世界は恐いって言うしな


146 名無しの権兵衛

 裏があるんだろ


147 名無しの権兵衛

 そうそう


148 安価好き

 俺自身は女子の世界とか分からないけど、中学の頃、Bが他の奴と一緒に俺の悪口をしていたのを聞いたことがあるんだ。

 始めてできたA以外の友達だし、女子だったから、別れるのが嫌でその時は聞いてない振りしたんだ


149 名無しの権兵衛

 安価好き……


150 名無しの権兵衛

 ……………………


151 名無しの権兵衛

 でもよ、安価好き。

 二人だけの友達で別れたくないのは分かるけど、今の関係は両方にとってよくないもの何じゃないだろうか。

 これを機に止めた方が良いかもしれないぞ


252 安価好き

 え?


253 名無しの権兵衛

 おい、お前何を


254 名無しの権兵衛

 辛いとは思うけどさ、お互い嘘ついてる今の方が辛いんじゃないかと俺は思う

 友達の振りするBも、いつ終わるのか怯える安価好きも。だから、いっそのこと終わらせてしまった方が


255 安価好き

 だけど……


256 名無しの権兵衛

 考えた方が良い


257 名無しの権兵衛

 俺も……、


254の言う通りだと思う……


258 名無しの権兵衛

 俺も、その方が良いと……



 世夜の目は画面の中を見ていた。次々と写りだされていく言葉に眉を寄せている。

「うん?」

 動き出そうとする指を何かは好奇の色で見ていた。



259 名無しの権兵衛

 本当にそれで良いのか

 嫌々、だとしてもそれは中学の頃の話だろ。今は高校生だろ


260 名無しの権兵衛

 ? >259は何を言いたいんだ?

 もう少し分かり易く


261 名無しの権兵衛

 おう、すまねえ。

 その中学最初の時はBも利用していたのかもしれないけど、今までずっと友達やってきているうちに、少しは本当の友達になているんじゃないのかって思って

 可能性だけど……


262 安価好き

 それは、そうなったらいいなとは思うけどでもそんなの無理だよ


263 名無しの権兵衛

 何でそんな事言えるんだよ

 高校に入ってからも悪口とか言われたりしてるのかよ


264 安価好き

 それはないけど……。でも


265 名無しの権兵衛 

 あのさ、安価好き

 おれ、


261の考え方が凄いと思うよ。

 友達なんだから最初はどうあれ仲良くできたら良いんじゃないかな

 ……可能性が少しでもあるなら信じてみても良いんじゃないかな


266 名無しの権兵衛

 俺もそう思う。仲良くしたいんだろ


267 安価好き 

 信じてどうしろって言うんだよ

 AとBのよりをもどすの諦めればいいの。それで友達がいなくなれって


268 名無しの権兵衛

 そうじゃないってただ明日でも話してみたらどうかって


269 安価好き

 何を……

 

270 名無しの権兵衛

 話す内容なんて何でも良いよ

 ただちょっと腹を割ってさ、話してみたら良いんだ。弱気に何なよ


271 名無しの権兵衛

 そうだぞ、時間は偉大だ。信じろ


272 名無しの権兵衛

 一緒に過ごした日々は楽しかっただろう。それを信じてみたらいい。相手も同じ気持ちだったって


273 安価好き

 でも……



「あと一息。流れが変わる前に、早く」

「おう」



274 名無しの権兵衛

 友達って言うなら信じてやれよ。それが先ず友達の第一歩じゃないのか




「う……、書いてて背筋が寒くなった」

「良い言葉だと思いますよ」

「いや、寒い」





275 安価好き

 うん。そうだね

 その言葉が画面に現れた瞬間だった。

 突然画面が激しい音を立てて揺れたのだ。それは外部からの衝撃と言うよりは内部からの衝撃と考えって良いのか、画面の中がゆらゆらと揺れている。



276 名無しの権兵衛

 な、なんだ!


276 名無しの権兵衛

 おい、今、パソコンの画面が揺れたんだけど、何が起こったんだ。地震か!


277 名無しの権兵衛

 テレビで地震の奴流れてないよ。つうか俺の所もなった

 何だったんだよ






「……今の」

「書き込んで」

「え」

「いいから」





278 名無しの権兵衛

 じゃあ、明日頑張れ

 友達だって思っているなら、向こうだって思ってくれるはずさ


179 安価好き

 え? うん。ありがとう


 また画面が揺れる


280 名無しの権兵衛

 また1

 

281 名無しの権兵衛

 なんだよ、ホラーなのか





「後、ほんの一息」

「一息ってこれ以上何を言えば良いんだよ」

「何でも良いから早く」

「いわれてもわからねえよ」

 戸惑う視線の先新たな文が付け足された。





282 名無しの権兵衛

 明日何かあったらここを頼れ。保守して待っている。


283 名無しの権兵衛

 ここの奴らは仲間だと思って良いから


284 安価好き

 うん。ありがとう。

 明日頑張ってきます








 パンと破裂音が響いた

 パソコンの中から何か異形の物が飛び出してくる。すぐに引っ込もうとするその異常に何かは嬉しそうに追い掛けた。

「やっと来た。逃がさない」

 異形が消え波紋を立てている画面に何かは手を置いた。触れた手のひらから引きずり込まれるように画面に入っていく何かに彼は思わず手を伸ばした。

「おいちょっと待って!」

 彼はまだなにが起きているのかを知っていなかった。だから手を伸ばし、その手は何かの裾に確かに触れていた

 世夜の意識が飛んでいた。

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