第四百七十話 三姉妹の絆編 その十八


 一文無しの美咲とその場で別れ、あとは買い物を楽しみ。

 午後四時を迎える。

 

「色々買ったな……」

 

 心美がどれだけ一緒にいるかは分からないが、一応心美用の生活用品等も購入し、家路についた。

 

「今日は楽しかったです!」

「それは良かった」

 

 美咲が来なければ充実したと言えなくもない。

 

「ふっ、帰還が完了したらまた勝負しようぞ。心美」

「勝負ですか? 今度は何を?」

「吾の反応速度を上回る貴様に、スマ〇ラ勝負を挑もう」

「〇まぶら?」

 

 これは……勝てるのか?

 

「心美」

「なんですか?」

「それはお前勝てるかどうか分からないぞ」

「ふっ、今回は勝ち負けは良いだろう。何も賭けん。純粋に貴様の成長を楽しみたい」

 

 ア〇ーボなの? 心美は。

 

「育てるとドンドン強くなりおるからそうかも知れんぞ」

「いえ私はそんなに……」

「謙遜する事はない。ゲーマー界屈指の強者たる吾が認めたのだ。もっと誇りを持ちたまえ」

「わ、分かりました!」

 

 私と友達になると言ったけど、江代の方がこいつと仲良さそうなのなんなんだろうな。

 ゲームの天才同士だからか?

 心美自身に自覚は無さそうだけど。

 

「初さんも一緒にやりますか?」

「ゑ?」

「どうしました?」

 

 あーこいつ自覚ないわ。

 私がお前らと戦ったら恥かくくらいしか出来ねえ事に気付いてねえ。

 

「お前らの次元についてけねえからパスしても良いか?」

「何言ってるんですか! 友達と遊ぶのに勝ち負けなんて気にする必要ありませんよ!」

 

 遊びというか私に言わせればリンチだぞ。

 

「ふっ、貧乳の銃士は所詮一般兵にも満たない実力……。吾が相手するまでもない」

 

 逆だぞ。逆にお前らが将軍とか皇帝並みに強いんだぞ。

 

「言い訳か?」

「言い訳したくもなるわ!」

 

 どんだけ負けたと思ってんだ……。

 

「吾にとって貴様との勝負はパンを食うのと同じだからな」

 

 骨がねえと思われても仕方ねえから何も言えねえよ。

 

※※※

 

 時間は飛び、その日の夜。

 夕飯を食べ、数回スマ〇ラをし、夜十二時。

 既に江代は眠りにつき、私も寝かけていたのだが。

 

「……」

 

 心美がまだ寝ていない。

 どこか遠くを見るような表情で、外を見ていた。

 

「何か思い出せたか?」

「……! 初さんですか……」

 

 少し驚かせたらしい。

 

「思い出せてはないです。私にはそれより、今初さんと共にある自分が好きですから」

「そうか」

「だからこそ、少し今日の事を思い出して思ったんです。私は初さんの悩みを助ける為に、友達になったのに、まだ何も力になれてない」

「……」

「寧ろ、私以外といる時の方が楽しそうに見えるんです」

「……はあ」

「初さん?」

「やっぱり、そう見えちまうんだなってさ」

 

 変だ。

 相変わらずこいつは変な奴だ。

 

「お前ってホントに感性が変だよな。アレが楽しそうに見えるとか」

「そうです?」

「おう。お前以外の奴なら、あんな関係性に自分がいたら絶対嫌な気分になるし、見ていて楽しそうとは思えないぞ」

「……」

「まあそれはそれとして、まだ力になるとか……そういうのは良いぞ? まだお前は私に迷惑を掛ける側だけど、お前はあいつらと違って、貰ったものをちゃんと返そうと考えてる」

「初さん……」

「今はまだそれで良い。一応……期待しておくからな。一応な。おやすみ」

 

 私はそれだけ告げて布団にもぐる。

 

「頑張らないと」

 

 そう告げる心美の声が聞こえた後、初も眠りについた。

 

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