第四百五十九話 三姉妹の絆編 その七


「ありがとうございました」

 

 会計を終え、店を出る。

 はあ……何で私がこいつの分まで払わなきゃならんのだ。

 

「金持ってねえなら連れてくなよ……」

「すみません……」

「まあ記憶喪失の話聞いた時に店から立ち去る選択をしなかった私にも非はあるが……」

 

 ……。

 

「どうしました?」

「もっとやべえことに気付いた。お前どこに帰るんだ? 家も分からねえし金もねえんだろ?」

「そう言えばそうでしたね……また公園に戻らなければ」

「涼しい顔で言うなよ」

 

 ホームレスでもこんな台詞サラッと言う奴はいねえだろうに。

 

「今日はすみません、奢ってもらってしまって。今度はお金の要らない方法で何かして遊びたいです」

「そ、そうか……」

「では、また会いに来てくださいね」

 

 そのまま心美は背を向ける。

 だが今度は私が、

 

「お前、このまま戻って……そのまま生きていけるのかよ」

 

 彼女を止めずにはいられなかった。

 

※※※

 

「え?」

「友達とか友達じゃない以前に、それじゃあお前が生きてけるか心配だ。お前が親と別れて何日経つかは知らねえけど、流石にこれからまともにもの食わずに生きられねえだろ」

「でも……私にはどこにも行く場所がないんです……」

「……この手だけは使いたくなかったけど、しゃあねえ……」

 

 丁度姉さんいねえし良いよな。

 

「私の家来るか?」

「え……」

「お前確か友達になりたいって時言ったよな? もし私が傷つけられそうでも、すぐ守るって。なら、私と暮らした方が好都合だろ?」

「ですが……迷惑ではないんですか?」

「寧ろボディガードになってくれるなら歓迎したいくらいだ」

 

 今江代と母さんしか家にいないとは言え、もし母さんが私に当たり散らすようならこいつを生贄にしても良さそうだしな。

 

「今凄い悪い顔をしたように見えましたよ」

「うるせえよ気のせいだ」

 

 マズいな……最終章にしてまた夜〇月とか呼ばれてしまう……。

 

「友達なんですから、もし初さんが間違った道に進もうとしてるなら止めますよ」

「一つ良いか?」

「なんですか?」

「前置詞に友達だからは、もし友達なら要らねえからな?」

「あ、そうですね」

「取り敢えず、今から親と妹に相談してみるから……じっとしててな」

 

 取り敢えず今の内容をまた血文字でメモしねえかどうかは見守らねえと。

 

「大丈夫そうだな……」

 

 私はスマホを取り出し、江代に電話を掛ける。

 

「もしもし江代」

『ぐ……ぐぐぐ……吾は何故……貴様らをこうも死なせてしまうのだ……ッ!』

 

 何やらまた自分の世界に入っている模様……。

 

『貧乳の銃士……貴様またも大罪を犯してくれたな!』

「私が何したのか三行以上で答えろ」

『以上だと!?』

 

 以内だと尺稼ぎ出来ないだろ考えろよ。

 

『貴様また愚策を……』

「んな事どうでも良いから早く何があったか言えよ」

『吾は〇5RとSをまた両方やっておったのだ……しかしな、貴様が今通話を掛けてきたせいで両方負けてしまったぞ!

貧乳の銃士、吾らの同胞を殺めた罪……その魂を以て償わせるぞ!』

 

 こいつに片方ずつやるという選択は無くなっていたのね。

 そして三行以上で三行しか使わなかったな?

 

『条件は果たしたぞ、さあ要件を言いたまえ』

「闇の騎士、取り敢えずお袋に同居人一人増えそうなんだが良いかと聞いてくれ」

『同居人……?』

「今から連れてくから、早めに許可とれ。じゃあな」

『貧乳の銃士、怪しい賊は連れてこぬよな?』

「賊連れてく馬鹿がどこにいんだ。早くしろ」

 

 通話を切る。

 

「いくぞ」

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る