第四百四十二話 バレンタイン その十一 ♡


「お前の下らんロボの技ももう終わりだ。さあ、もう一度僕に倒されるんだ」

 

 ……こいつに嘘って効くかしら。

 

「ねえアンタ。後ろ見たらどう?」

「後ろだと?」

 

 引っかかったわね! その内に瞬間移動で!

 

「あ!」

 

 ふふふ~! バーカバーカ!

 あっさり引っかかったわね!

 このまま逃げるわよ!

 

「はっはっは!」

 

 はぁ……でもリア充をもうちょっといたぶりたかったわね……。

 

※※※

 

「たらいま……」

 

 疲れた……この私が……。

 

「あら淀ちゃん、早いのね」

「母さんか……二人は?」

「多分それぞれの彼氏の所じゃないの? 江代ちゃんが恋するなら応援しなきゃだけど寂しいわね」

 

 私がボロボロなのに放っておく母親なんて嫌いよ。

 

「あら何か言ったかしら?」

「アンタそれでも人間かって心で呟いてたわ」

 

私がバレンタインで良い想いしたいなんて、間違ってたのかしら……。

 

※※※

 

 ……。

 

「あれ、そう言えば淀子姉さん最近元気ないけどどうしたんだろ」

「ふっ、さあな……」

 

 分かってる癖に……殴り飛ばすわよ……?

 

「学校にも行かないしな……」

「ふっ、仮病でママに迷惑をかけおって……」

 

 母さん別に何もしてないから迷惑もクソもないわよね?

 とにかく私は今外に出たくない。

 この世からバレンタインという行事が消えるまで、私はここで……。

 

「ふっ、どうする? 貧乳の銃士」

「粗大ごみの日っていつだっけ?」

 

 粗大ごみに粗大ごみ扱いされる日が来るなんてね。

 非リアの私を嘲笑いに来てる……。

 

「クソ……あの剣士さえ。あの剣士さえこの世にいなければ……」

 

「もう近付きたくねえな」

「ふっ……邪悪なものを感じる」

「でもどうする? 流石にこのまま放置しておくのもなんだかな……」

「放っておけばよい……」

 

 ……。

 

※※※

 

 また一週間が経過。

 

「うう……ううう」

 

 初めてよ。こんな悔し涙。

 

「初めてではねえけどな」

「ふっ……」

 

 ……?

 

「おい起きろ。てか学校行け」

「初?」

「バレンタインからは残念だけど一週間過ぎたが、やるよ」

「ふっ、吾からもだ」

 

 ふ……二人とも。

 

「私が大事な家族を放置するとでも?」

「ふっ、闇の騎士は決して主を裏切らんぞ」

 

 皆……リア充殺しまくるとかそんな事言ってごめん。

 私嬉しくて……。

 

「嬉しくて」

「ああ」

「ふっ……」

「もう……」

 

 もう……。

 

「ゲロが止まらうおげろろろろろろろろろろろろろろ……」

「だから汚えよ!」

「ふっ、伝統芸能だな」

 

 皆、ありがとう……本当に。

 

※※※

 

 ? ゑ? まだ続くの?

 こんな良い終わりなのに?

 

「? 何? チョコの入ってる筈の箱を開けろって? 別にあげないわよ?」

 

 ……。

 

「仕方ないわね開封するわ」

 

『ニュース見たぞ。何かまたやらかしたらしいな。大人しく牢屋に行くことを心から祈るぞ。チョコ? お前にやる奴なんてあるわけねえだろ』

『ふっ、見損なったぞ』

 

 あの二人……。

 

「おいアンタら! ぶっ殺してやるから待ってなさい!」

 

 中にはいない。外に逃げたわね!

 絶対殺してや

 

「真剣勝負の最中に逃げるとは良い度胸だな」

 

 !?

 

「ゑ……えーっと、や、やあ三栄くん。私に何の用かな?」

「お前の妹二人から貴様が家に引きこもっていると聞いてな。家から出るのを待ってたんだ」

 

 いや家ごと破壊しないのこの人。

 

「僕が捕まる」

 

 真面目かよ!

 

「とにかく、もうお前はここで終わりだ」

「いやちょっ待って! 話せば分かるから!」

「もう無駄話は不要だろう?」

「確かに一話のノルマ終わってるけど! このまま伸ばさないと私が死ぬ!」

「殺しはせんよ。せいぜい半殺しだ」

 

 嫌よ!

 

「私は逃げ

「問答無用!」

 

 バシッ!

 

「あああああああああああああああああああああああああッ!!」

 

※※※(まだ少し続くよ)

 

「助かったぞ三栄」

「全く……真剣勝負の最中に逃げるのは卑怯だぞ……」

「私の姉さん、そういう奴だからまあ許してやってくれ」

「ふっ、手がかかる」

「とにかく、もうこれ以上暴れんようにお前たちも何とかしてくれ」

「あいあい。てわけでこれ報酬。私達彼氏いるから本命はあげられんが、一応報酬代わりの義理チョコだ」

「ふっ、吾からもな」

「僕は甘いものはあまり好みではないけど、いただいておくよ。緑の子の方はいたずらで僕に喧嘩を挑まないようにな」

「二章の事をまだ覚えていたのか……そして我が名は江代。闇の騎士だ」

「江代か。覚えておく。ではさらば……」

「おいバナナで転ぶなよ!」

「僕は同じ轍を何度も踏まないようには気を付けうおあっ!」

「……」

「……これだけ来ると何か凄いな」

「だな」

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る