第三百八十五話 親戚の集い その三

 

 数十分後。

 

 トン♪

 

「久しぶりに鹿威しの音が聞こえたな……」

 

 私がする度にこれやるのか……。

 

「ふっ、貧乳の銃士よ……まだか?」

「今出るから待ってろ」

 

 もう男子ですらお分かりだと思うが、勿論サービスエリアについてからそのままトイレへ……だと思ったら大間違いだ。

 女子トイレ最大の関門。行列。

 女に生まれた以上避けて通れない道を、私は何とか耐えて今に至る。

 

「はあ……」

 

 あとは……うん。痛いくらい溜まってた時は出ると快感なのだ。

 例えるなら先輩をオカズにして

 

「それ以上快感に惑わされるようならギガウィンドだ。吾も正直出そうなのだ」

 

 身内だと余計厳しいな……トイレ渋滞。

 姉さんは一日に一回か二回行けば多い方なのに。

 

「早くしろ」

「分かったよ!」

 

 流石に騒ぎを起こすわけにはいかん。

 

※※※

 

 名古屋に着いたのは、それからまた数十分が経過した辺りだ。

 普段なら一時間足らずでいけるというのに……本当に正月は恐ろしい。

 

「……着いたわね……」

 

 言ってしまうと、もう全員バラバラの理由で心中穏やかではない。

 

「渋滞……しんどい……」

「法音の相手やだ……」

「ふっ……苦しい戦いだった」

「またトイレ行きたい……」

「久しぶりにパパとママに会えるわ♪」

 

 訂正。お袋は何だかんだ楽しそうだ。

 

※※※

 

 駐車場からすぐの所に、その家の入り口がある。

 昔の道場的な正門の前に立ち、まずする事が……。

 

「取り敢えずインターホンを

 

 ガンッ!

 

「!?」

「「開けたわよ」」

 

 ……。

 そう。毎年……というか帰省時には毎回見る光景。

 何故かこの二人は門を蹴破る。

 もう門なんて要らないんじゃないかってくらい。

 

「……はあ」

 

 だけどうちの織田側……つまりお袋の方のおじいちゃんはと言うと……。

 

「おお! 市華、それに淀子来たのか!」

 

 門が壊されているにも関わらず、毎回笑顔で迎え。

 それどころか、

 

「またうちの門を脚力だけで全部吹き飛ばしたのか……流石我が娘と孫娘よ」

 

 このジジイ……馬鹿なのである。

 

ひでじい……。あまりこいつらを調子に乗らせないでください」

「お、貧乳。相変わらず小せえな」

 

 あ、めっちゃ殴りたい。

 

「落ち着け初」

「すまん親父」

「なんだお前また来たのか」

「あ、はい。親戚の集いで、僕の家族も来ている筈なので……」

「言っておくがワシはお前を娘の夫と認めた事はない。本当ならお前の家族が来るだけで不快なのだがな」

 

 そう……両方の親戚の集まりというから聞こえは良さそうなのだが、織田家と浅井家……色々訳アリで仲が悪い。

 

「……」

 

 勿論親戚の集いもこいつらが望んだ事ではなく、織田家の違う親戚が空気を読まずこんな状況になっている。

 全く有難迷惑な話だ。

 

「……行こうか、初」

「ああ」

 

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