第三百四十八話 親戚の集い その二


 家を出て三十分後。

 高速道路に……入れない。車に乗る人ならお察しであろう。正月の帰省渋滞である。

 

「結構ここで時間取られるんだよな……」

 

 親父もイライラしながらハンドルを握っている。

 

「イライラしたし前の車ぶっ飛ばしたいわ」

 

 お袋も笑顔でそう呟く。

 うちの家族にとって、渋滞は不快だけではない。

 恐怖も生まれる。

 

「淀ちゃん前の車ぶっ飛ばしに行かない?」

「良いけど刑務所はアンタが行きなさいよ」

 

 仲良く二人とも逃亡しそうだ……。

 

「ふっ……我が魔法で打ち砕こうぞ」

 

 お前までやめろ。

 

※※※

 

 

 やっと入口の渋滞を乗り越え。

 ETCのゲートを通り……やっと第一関門突破だ。

 

「何とか行けたな」

「はぁ……」

「なんだよ姉さん」

「私こういう時に生まれる感情が一つあるのよね」

「何だよ」

「母さんもだけどさ……自分で走る方が明らかに速かったとか思わない?」

「ええ勿論よ」

 

 化け物が。

 

「「私達が化け物……違う。私達はあくま

 

 そのネタはもう良いよ。

 

※※※

 

「あー……」

「何よ初。いきなりアンタが話し出すなんて珍しい」

 

 そうでもない気がするが。

 てかそんな事言ってる場合じゃねえ。

 

「トイレに行きたくなってな」

 

 あの入り口渋滞だけでかなりの時間があった。

 割と今深刻にヤバい。

 

「貧弱ねえ」

「うるせえな」

「だって私そこまで回数行かないし」

 

 お前が特殊体質なだけだと思うぞ。

 

「そう? まあ私の身体は都合の悪い毒を全部分解しちゃうから病気になったり太ったりしないのよね」

 

 世の長生きしたい人とか女が絶対羨む体質だな。

 おまけに外見も変わらなそう。

 

「それは知らないわ」

「もし五十六十でもお前の外見がまんまだったら呪うからな」

「良いじゃないのよ外見が成長しないくらい……私なんてこの章になってもそういう話ないし……一生独身なんじゃないかって考え始めてるわ」

 

 OK作者。

 

 Googleじゃねえよ俺。By作者

 

 姉さんは一生独身にしてやれ。

 

 了解。By作者

 

「やったぜ」

「あとで表に出なさい」

「せめて着いてからにしろよな」

 

 この前みたいに高速道路でバトルとかごめんだ。

 

「てか親父、サービスエリアまだか?」

「すまんまた渋滞だ……」

 

 正月の高速道路なんて嫌いだ。

 

「淀子、出来れば初をおぶって走れないか?」

「親父落ち着け」

 

 気持ちはありがたいが迷惑だ。

 

「海に突き落として良いなら」

 

 訂正。迷惑以前に私が死ぬ。

 

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