第三百七十五話 初詣 その四


 新年早々ラ〇ィッツに出会っちまった。

 

「おじちゃん五回射的やらせて。二人分ね」

 

 再びスイッチ。

 

「……出した額たったの千円か……ゴミめ」

 

 思い切り五回五百円って書いてあるんだけどな。

 

「取り敢えず景品を……って景品は……?」

「俺を撃ち抜くんだ。お前たちみたいな女なら歓迎だ」

 

 アレ……ここSM専門店なのか?

 

「すまん。私達そういう趣味はないんだ」

「どういう意味!?」

 

 ツッコミすら無駄に思えるな。言葉通りだ。

 

「分かったわおじさん」

「お、茶髪の嬢ちゃんは分かってくれるのか」

「どこが分かったんだよ」

「景品要らないから金くれ。じゃないと〇玉潰す」

 

 ストレートだな。

 

※※※

 

「ほら私撃たないで景品ゲットよ」

「それ景品手に入れた事になってないぞ」

 

 私がお手本を見せてやるか。

 

「おじさん。馬鹿な事やってないで景品を出しな」

「無理……金ないから撃たれ屋やり始めたのに今ので全部売り上げ金持ってかれた」

 

 殴られ屋の派生形か何か?

 

「てか初詣でやる事自体が失敗な気がするんだが」

「ああ……」

「だったらもう普通に殴られ屋で稼いだ方が早くないか? 姉さんとか相手にして」

「殴られたくない。撃たれたい」

 

 FPSプレイヤーの私に言わせれば撃たれるなんて絶対嫌だけどな。

 

「アンタ武士か何か?」

「私は銃士の誇りを持った女子高生よ」

「違うアンタ厨二ね」

 

 それは違うぞ。

 

※※※

 

「どうでも良いから好きなだけ撃ってくれ」

「どうでも良いからもう帰れ」

 

 多分疲れてんだよこいつ。

 

「しょうがないわねえ。じゃあ私がやるわ」

「良いのかい。じゃあ金を返し

「断るわ。アンタには今ここで殴られてもらうわ。無償で」

「だから何で撃たないの!? いやてか何で殴られなきゃいけないの!?」

「黙っておこうと思ったけど今あの日でイライラしてんのよ」

 

 ついにこいつにも『あの日』システムが実装されたか。

 今まで私だけ苦しんでいたのにな。

 

「そうよ。二次元の女子には絶対存在しない筈なのに」

「いやエ〇ァの〇スカはあったぞ」

「そうなのね」

 

 昔のアニメはそこら辺リアルだよな。

 

「というわけで歯を食いしばりなさい」

「やめてくれええええええええッ!」

 

 そこで響く……一つの爆音。

 拳が木製の何かに防がれたものだ……。

 

「……また、悪事を繰り返すつもりか」

「三栄!」

「邪魔が入ったわね……」

「皆が新年を祝う初詣で、君のような賊が暴れるのを見過ごせなくてね」

 

 三栄は木刀を掲げる。

 

「まったく……強者の台詞ね」

「今すぐにやめろ……さもないと斬る」

「いつもいつもアンタに負けるなんて思わない事ね!」

 

「な……なんだ……」

「あー……一応正義のヒーローって事で良いか?」

「勝ったらあとで撃ってもらおう」

 

 三栄絶対やらないと思うぞ……。

 

「まあ良いや……精々頑張れよ撃たれ屋のおっちゃん」

「目つき悪い嬢ちゃん撃ってかないの!?」

 

 目つきいじったな? 殴るぞ。

 

「ひいっ!」

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る