第三百四十八話 王様ゲーム その一


 一回戦。

 

「王様だーれだ!」

 

 全員で一斉に割り箸を引く。

 今更だが何故高級焼き肉店でこんな事をしているのだろうか。

 ……場違い過ぎる。

 なんか親父たちも変な目(たまにエロい目)で見てくるし。

 

「私だー!」

 

 モブAが今回の王様らしい。

 私は三番だ。

 

「じゃあ三番は……」

 

 いきなり私か。

 

「二番にハグして」

 

 ハグか……。この面子で……奈々子なら良いんだが……。

 

「二番誰?」

「私よ」

 

 お前か姉さん。お前にハグとか嫌だわ。

 

「果〇ちゃんにしかこの台詞言わないって決めてたけど……」

 

 は、は、は……。

 

「ハグ、しよ?」

「気持ち悪いわ」

 

 姉さんが近付く。さあ来い。

 

「ぎゅーッ!」

「いだいいだいいだいだいだいだいだい……」

 

 死にそう……。

 

「このまま首絞めて良い?」

「いい加減にしろ」

 

※※※

 

「王様だーれだ!」

 

 割り箸を引く。

 

「ふっ、吾だ」

 

 次の王様は江代らしい。

 私は五番。

 

「ふっ、では五番は……」

 

 また私かよ。

 

「吾がなでなでしてやる」

 

 ……江代さん失敗したな。

 

「五番のロリっ子は誰だ? 吾がなでなでして可愛がってやろうぞ……」

「私だよ」

「げっ、貴様か……」

「さあ早く……なでなでしろコラ」

 

 頭を差し出す。

 

「却下しても良いか?」

「ダメだ。王様の命令は絶対だ」

「うう……」

 

「どうしてだよぉお!!」

 

「八つ当たりで私の髪ぐしゃぐしゃにすんのやめろ!」

 

※※※

 

 髪を整え、もう一度。

 

「王様だーれだ!」

「私だ~」

 

 和泉が王様だとッ!

 ……私は六番だ。

 

「じゃあ三番は」

 

 ふっ、外した。

 

「私とキス~!」

 

 さてこれは誰なんだ……。

 

「私よ」

 

 姉さあああああああああん!!

 

「ねえ初。一生のお願い……このキスシーンだけは絶対にカットして!」

「は?」

「私〇人君と結婚したいの! だからこれ見られたら私お嫁にいけないわ」

 

 知らねえよ! テメエに興味ねえよ多分!

 

「へ~淀子ちゃんなんだ……要らない」

「和泉悪いわね。王様の命令は絶対なのよ」

 

 姉さんは

生まれて初めて

心の底から震え上がった……。

 恐ろしさと絶望に、涙すら流した……。

 

「私を某サイヤ人と一緒にしないで」

 

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