第二百六十話 体育祭 その三


 一週目中盤。

 倒れたクラスメートの屍を踏みながら、私は和泉を背負い駆け抜ける。

 

「初ちゃぁん……」

「大丈夫だぞ和泉」

 

 こんな事してるからこいつレズっちゃうのかなあ……って言ってる場合じゃねえ。あと一週半あんだから。

 

「余裕ですわね、浅井さん」

「あ、私専用の爆弾」

「その呼び方やめなさい!」

 

 もう確定したからなあ。

 

「確定してませんわ!」

「お前がそう思うんならそうなんだろう。『お前の中』ではな」

 

 拒否権は認めない……てわけで。

 

「あそこ一帯のハエどもを吹き飛ばすぜ」

「?」

「爆弾持ったか?」

「一応」

「じゃあ投げるわ」

「ゑ?」

「そーれッ!」

「うわああああああああああッ!」

 

 美咲は帰らぬ人となった。

 

「どうせまた蘇るし大丈夫だ」

 

※※※

 

 一週目後半。

 

「美咲を生贄にしたのは良いが……まだ先は長いな……」

 

 眼鏡元肉まんがリポップするまでにはまだ時間が掛かる。

 

 それまでは時間を稼がなくてはならないのだが……。

 

「待ってください!」

 

 この口調……。

 

「ゑ? リポップ早くね?」

「……?」

「あれ? お前誰?」

「私です!」

 

 いや読者は分かんねえよ。

 

「スタ子です!」

「ごめん美咲と同じですます調だから分からなかったわ」

「この小説がどういうシステムになってるか分かりません!」

 

 まあ大体はそう思うよな。

 

「いやスタ子。メインキャラとして生きるならこれに慣れるのは宿命なんだ。頑張れ」

「頑張れで済む問題なんですか!?」

 

 そうじゃねえんだよな……。

 

「スタ子。お前はロボットだから分からねえかもだが……それが人間なんだ」

「人間の考えてる事すら分からなくなりました!」

 

 作者よ。機械にはお前の考えてる事が分からんらしい。

 

「だってそうでしょう? ここまでの経緯を読ませていただきましたが! 視点投げたりするラノベなんて聞いた事がありません!」

「ヒロインがカツアゲが趣味てのも読んだ事ないだろ?」

 

 あとかめ〇め波を通常技として使うとか。

 

「まあ一々気にしても仕方ないからさ。戦うか退くか早くしろ」

「もうエラーで停止しそうです!」

 

 ゑ? これで?

 じゃあ私何回停止しなきゃいけねえわけ?

 

「大体初さん、最近ツッコミの仕事をサボりすぎです!」

「そもそも私ってツッコミなの?」

「忘れたんですか!?」

 

 いや別にツッコミを名乗った事ねえし。私にも休暇くらいくれよ。

 

「まーたそうやって前の章みたいに怠ける気ですか!?」

 

 あーもーうぜえ。

 

「うぜえじゃありません! 私は本気で心配してるんです!」

 

 てかロボットか。どう倒そう。

 

「って! 私を無視して戦闘態勢に入らないで下さい……ゑ?」

「本気出すか」

 

 私はマスクを着けた。

 そのまま……。

 

 私の意識が消えた。

 

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