第二百六話 アイドル大会編 その三十二


『BOOOO!!』

 

「なんか心配してた通り荒れてるな……」

 

 趣味がダンスや歌という奴以外は、本当に興味本位で参加していたのだろう。

途中失敗やアクシデントを起こす者が多発し、ブーイングが巻き起こった。

 

『で、では次のグループです! BandGirls!』

 

 お、あいつらの出番か。

 

「アンタはこいつらの演奏聞いたのよね」

「ああ」

 

 その時は完全に某グループのパクリしか演奏しなかったけど、今回は大丈夫か?

 

『……』

 

 皆……乙。

 

「何か台詞が中国語みたいに見える」

「それな」

 

 そんな下らない会話をしている間に、皆から期待されていない状態でBandGirlsはステージへと上がる。

 

※※※

 

『……』

 

 そこで空気は変わったと、私は確信する。

 BandGirlsは、路上ライブや地下ライブである程度の知名度を得ていた。

 その証拠に、ブーイングは消え……。

 

『BandGirlsだ!』

 

 代わりに、隠れたファン達による歓声が巻き起こり、それが伝染していく。

 

『知らない方が多いと思うので、改めて自己紹介をします。私は、BandGirlsのシマです』

 

 私の前で演奏した時と同じような、笑顔の中に真剣さを秘めた表情。

 

『人が用意した場でライブをするのも、今までのファンを含めた……大勢の人にライブを見てもらうのも初めてです』

 

 正子達には負けるが、他チームとの格の違いを感じる。

 映像越しだというのに。

 

「おろろろろろろろ……」

「やめろ」

 

『皆さんが、私達の演奏を好いてくれるかは分かりません。ですが、私は精一杯やるつもりです』

 

 そのまま手を挙げる。

 

『それでは聴いてください! 「誓い ―Covenant―」』

 

※※※

 

「今回は流石にオリジナル曲か」

「ふっ、良い曲だな」

 

 彼女らの曲は、バンドらしいロック調のものだ。

 一つ一つの歌詞も素晴らしく、聞いていて気持ちがよい。

 

「そういえば今日アイ風に歌詞載せねえのかな」

「うえっ……今作者に聞いたら……うっ……」

 

 吐きそうになるか喋るかどっちかにしろよ。

 

「今日アイ書いてる時点で作詞の才能がない事に気付いて、曲載せるのはやめたらしい」

 

 諦めんなよコラ。

 

「だからアンタらに全力で曲の感想を述べて欲しいらしいわ」

 

 しかも私達に丸投げかよ。

 

「大丈夫よ。どうせアニメ化とかした時に歌出るわよ」

「アニメ化なんて絶対有り得ねえからなこの作品」

 

 著作権とか書籍化出来るかとか色々な不安抱えてんだよ作者。

 

「ゑ? 作者ってチンパン以下ちゃうの?」

 

 作者チンパン以下ならお前どうなんだよ。

 

「アンタ以上よ」

「少なくとも頭脳面でそれはあり得ねえ」

「貴様ら! うるさいぞ!」

 

 江代。あとで殴るからな。

 

「ママに言うぞ」

 

 やめろ。

 

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