第百九十七話 アイドル大会編 その二十三 ✝


 夜九時。

 

「じゃあそろそろ寝るわよ」

「ちょちょちょっ! 正子っちそりゃあねえよ」

「どうしたの優香」

「あれ~正子っちもしかしてやったことない~? 淀子っちと同じ雰囲気なのに」

 

 赤の姫と正子が同じって……どれだけ大雑把な頭をしているのだ優香は。

 

「同感ね」

「淀子っちもあれやるよな?」

「無視したわね……? 鉄骨渡りしてた時といい、アンタ私以上にはっちゃけるのが好きと見た」

 

 ふっ、マズい事が起きているな。

 

「夏と言えばナイトハイクしかないっしょ」

「また無視ね」

 

 ……は?

 

※※※

 

 吾が心の声を出す前に、優香はあの行動力で戦闘に使った山まで引っ張った。

 

「取り敢えず先に山頂着いた奴を勝ちにするから」

 

 やだやだやだ!

 怖いよ~!

 

「相変わらず行動力凄いわね優香……」

「私もあんな行動力が欲しいな~」

 

 貴様は何故そんな呑気に構えてられる!?

 

「生きてた頃こんな事してないから……燃えてきたわ!」

 

 貴様らに恐怖の感情は無いのか!?

 

「び、微乳レズ!」

「どうしたの江代ちゃん」

「わ、吾も同行して良いか?」

「? いいよ」

 

 ふっ、微乳レズが悪意の塊じゃなくてほっとした。

 夜道を歩く? 怖いだけではないか。

 

「じゃあいこっか」

「ふっ、闇がたたた高まる……」

 

 声が震え過ぎてるぞ吾!

 しっかりしろ!

 

「んじゃ、私は一人で行くわね」

 

※※※

 

 数分後。

 

「ぶるぶるぶるぶる……」

「大丈夫?」

「貴様、吾がそこまで弱気ものに見えるか?」

 

 漏らしそう。

 

「漏らしそうって心の声が聞こえる」

 

 もう失禁ネタは勘弁してくれ!

 吾のキャラが分からなくなる!

 

「元々江代ちゃんがどういう人なのか分かんないよ」

「わ、吾も貴様が分からんぞ」

 

 最初は普通だったのに徐々に悪化しているしな。

 

「……」

「あとどのくらいだ?」

「んっと、今看板見てみたけどあと五キロみたいだよ」

「ふっ、そうか……」

 

 まだ長いぞ……!

 

「まだ数分しか歩いてないんだし、頑張ろうよ」

 

 無理だ……。

 

「手を掴んであげるから」

「ふっ……要らぬよ」

 

 ありがとう微乳レズ。

 

「それにしても……本当に何か忘れている気がするんだよね」

「ふっ、気のせいじゃないか?」

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る