第百三十一話 岸本優香 その二
数時間後。
「終わった~……」
今日もデートに誘うのは無理だったな……。
仕方ない。次は絶対に誘ってやる!
「よう初っち!」
「……裏口で待ってたのかテメエ」
「うん! 遊ぼう!」
「やだ」
「そうかそんなに遊びたかったのね!」
こいつ人の話聞いてねえ……。
※※※
「うまいなあ……!」
「そ……そうかい」
結局たかりやがった。
姉さんの妹と知ってこんな事してんなら、本当に恐ろしい奴だ。
「てかあのバカ姉と一緒の時はどうしてんだ?」
「あいつは金持ちだから奢ってもらってる」
姉さんが他人に奢るとか珍しいな。
「正直な事を聞きてえんだが、お前はあいつの事をどう思っている?」
「なんでだい?」
「あいつは変とかそういう次元を超えている。あんな奴を友達に選ぶのはどういう理由なのか教えて欲しい。もし脅しなのだとしたら、私があいつにきっちり言い聞かせてやる」
まあ無駄だろうけど。
「別にそういうのじゃないよ。私と淀子っちは普通に仲良くなっただけ」
どう『普通』なのか詳しく説明して欲しい。
「一応言うけど……あいつの金は全部カツアゲで稼いだものだし、私はあいつに殴られまくってるし、妹とか超イタイ奴だし。それを知らないで付き合ってるのだと思うとすげえこわ
「全部知ってる」
ゑ。
「淀子っち、別におかしくないと思うよ」
「ならお前の感性相当イかれてる事になるけどな」
「ねえ初っち」
「なんだよ」
「ウチの事はいくら馬鹿にしても構わないよ。でも、ウチの友達を馬鹿にするのだけは許さない」
不思議だ。
不思議な事に申し訳ないという気持ちが一ミリも湧いてこない……。
「いやこんなに謝れない叱責もそうそうねえな」
「馬鹿にしてる系?」
「ちょっと違うんだよな……」
言ってる事は正しいんだろうけど、庇うような相手じゃねえんだよ……。
むしろ私に謝れよ。
「それに。ウチは姉妹とかすげえ羨ましく見える」
「やめとけ。絶対私と同じ思いするから」
「そんなに?」
「ああ」
……しょうがない。久しぶりにご教示しよう。
兄弟姉妹持ちの宿命について。
「じゃあ今から……一人っ子でも分かる兄弟姉妹講座をするわ」
「ん?」
「はいはい。今から資料送るからスマホ見て」
「え、うん」
ここからはお前らにも教える体で説明するからな。
まず、おやつの話をしよう。
皆はおやつ大好きだろうか? お菓子でもおにぎりでも良い。
おかんが作ったものでも、買ってきたものでも。
まず一人っ子が食べられるおやつの割合はこうだ。
『一人っ子のおやつ割合』
『満足する量を食べられている:五十二% もうちょっと食べたい:三十一% 食べられていない:十七%(超適当アンケート 心夜調べ)』
では私と同じ三人姉妹の次女、三女の例を見てみよう。
『三人兄弟(姉妹)の次男(次女)のおやつ割合』
『満足する量を食べられている:三十一% もうちょっと食べたい:三十九% 食べられていない:三十%(超適当アンケート 心夜調べ)』
そして最後が末っ子。
『満足する量を食べられている:十七% もうちょっと食べたい:五十% 食べられていない:三十三%(超適当アンケート 心夜調べ)』
「分かるか。今のは下の身分の話をしたけど、下の子が生まれてすぐは上の子は下に譲るという行為を強いられたりもする」
つまり何が言いたいかと言うと。
「最早兄弟姉妹など作る必要はないッ! 今の少子化のパワーで、兄弟姉妹の概念をこの世から消し去ってしまえェェェェッ!!」
「お……おう」
分かればいいんだ。分かれば。
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