第九十五話 初のデート大作戦! その一


「~♪」

 

 最高だ。人生でこんな最高な瞬間は、あまりない。

 今日の為に、何百何千と練習をしてきた。

 絶対に成功させてみせる!

 

「さっきから心の声がうるさいわよ」

「お前のテレパシー的な奴、オンオフ出来ねえの?」

「オフにしてほしい?」

「出来れば」

「して欲しければ三回周ってワンって言いなさい」

「やっぱり良いです」

 

 さて、何を成功させたいかを教えてやろう。

 今日は……バイト先の京極先輩をデートに誘おうと思っているのだ。

 

「あー無理ね」

「いきなり無理とか言うな」

「バレンタインチョコにアレの日の血を入れてるような非常識な奴に、彼氏が出来るとか思ってないわよ」

「良いじゃん世の女でたまにやってる人いるし!」

 

 地味に鉄分入ってるから健康に良いし!

 

「病気になるわよ」

「良いぜ姉さん……いつもいつもお前の予想通りに行くって思ってんなら……まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!」

「作者、またとあるはまり始めたのね」

 

※※※

 

「おっはよ~ございまあァァァす!」

「あ、おはよ~初ちゃん」

 

 げ……『微乳レズ』。

 

「何か失礼な事考えなかった?」

「考えてねえよ。頑張ろうぜ」

「え、うん」

 

 私の考え覗き放題とかマジでやめて欲しいわ……。

 さーて、『微乳レズ』を過ぎたら先輩が。

 

「浅井さん、おはよう」

 

 会いに来てくれたあ!

 

「先輩! おはようございますッ!」

 

 相変わらずカッコよすぎるよ先輩……。見てるだけで、身体が火照ってくるゥ……ぐへへ……じゅるり。

 

「初ちゃんお腹空いてるの?」

「違うわい!」

 

※※※


「らんらんら~♪」

「センスの欠片もないわね」

「うるせえハンガーぶつけんぞ!」

「逆に折れるわよ」

 

 は……?

 

「ちょっと待て……テメエ前に出禁にしたよな?」

「は? なんで私がアンタの出禁命令を聞かなきゃいけないのよ」

 

 まあ……それもそうか。

 

「とりあえず帰れ」

「いやぁ、あんな挑戦的な台詞を吐いておいて分かりましたとは言えないわね」

「予想を通す為に自ら出向きやがっちゃったんですか!?」

 

 どんだけ私に彼氏出来るの嫌なんだよッ!

 

「一章の恨み……まだ忘れてないわよ……」

「いい加減忘れろ! しつこいわ!」

 

 しかも私なんて怪我してるし!

 

「怪我くらいで大袈裟ねぇ」

「一回で良いからテメエの骨を折ってみてぇ……」

「鉄筋折る方がまだ簡単よ」

「もう帰れお前……」

 

※※※

 

 姉さんにはお帰りになってもらい、何とか今日の勤務を終えた。

 しかし、今日のミッションは終わっていない。始まってすらいない。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 あれ、なんで私はトイレで息を荒くしてるんだろうか。

 

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