第九十話 淀子、バイトを始める その三


 その日の昼過ぎ。

 

『速報です。爆破予告されていた滋賀県の某ビルの爆弾が、謎の物体の衝突によって爆破したとの情報が入りました。これによりそこで作業していた爆弾処理班二名が軽傷を負いました』

 

「ねえ初」

「なんだ人殺し」

「流石にあの爆発ならパン生地に指紋なんて残ってないわよね」

「知らね。てか捕まれ」

 

 マズいな……こいつのバイト先決める前に怪我人が出ちまった。

 

「~♪」

「てか私が悩んでる時にお前は何してんだよ」

「出来たわよ」

「何が……って……ああ……」

 

 あれ、これは何だろう。

 形はピザっぽいけど色が……。

 

「すみませんお姉さま、これは何をお作りになられたのですか?」

「ピザ」

「私の記憶の中では、ピザのチーズは黄色だった気がしますが。腐っていたんですか?」

「? チーズって焼いたら紫に

「ならねーよ」

 

 ドラ〇もんでこんなピザ出なかったっけ?

 

「材料は?」

「イカの塩辛にセミの抜け殻

「の〇太にでも喰わせて来い!」

「絶対美味いわよ」

「一章の最後の方で辛い経験をしてるから断る」

「なら無理矢理食わす」

「ちょっ、まっ……」

 

※※※

 

「オゲロロロロロロロロロロ……」

「情けないわね……」

 

 味の説明はしない。思い出したら吐く。

 

「私の料理はトラウマシーンか何かなの?」

「そうだよ。よく気付いたね」

「死になさい」

 

 お前のせいで死にそうだよ。

 

「てか早くバイト先探しなさいよ」

「……ぶっちゃけ言っていい?」

「なによ」

「はっきり言います。お前にバイトは無

「ん?」

「バイトは無

「ゑ?」

「バーイートーはァァァァァァッ!!」

「うるさい」

 

 こいつ……意地でも諦めない気だ……。

 

「諦めても良いけどさ、今度はマジで意図的に死人出すわよ」

「やめなされ」

 

 Z指定されちまうだろうが。

 

「グラ〇フ淀子エディションとか面白そうじゃない?」

「青少年向けの小説でそのゲームの話題を出すな」

「いいじゃんどうせよう〇べで見られるわよ」

 

 色々アカンだろ。

 

「んー……。ガソスタは?」

「却下」

「何でよ」

 

 読者の皆は、こいつと違って言わなくてもわかるよな?

 

「どういうこと?」

「自分で考えてみな?」

「?」

 

 ダメだこいつ。

 

「あ、そうだ」

「初……?」

 

 そうだ。何なら試させてしまえば良い。

 しかも私の知り合いに、丁度いい奴がいる。

 

※※※

 

「つーわけで、やってきました異世界道具店」

「初ちゃんこんにちは。そこの美人さんは誰?」

「淀子。この馬鹿とあの常連の厨二病の姉」

「あー、初ちゃんと江代ちゃんの姉ね。遠藤っす、よろしく」

 

 カット。

 

「なるほど。バイト先を試せる機械ね……」

「おうよ」

「たださ初ちゃん」

「なんだ?」

「二章の舞台作ったり、そもそもこんな店を開いたりしてる俺が言うのもなんだけど……俺をドラ〇もんか何かと勘違いしてない?」

「違うのか?」

「あれ……初ちゃんはツッコミじゃないの?」

「お前がいるし良くね?」

「いやサボるなよッ! 初さん二章で何度か出番取られてるって聞いたよ!?」

「おっといけねえ……」

 

 まあこれ以上私の存在をブレブレにするなら、作者の内臓をぐちゃ〇〇〇にして〇臓をミ〇チにしてやる。

 

「遠藤、そんなわけで玉ねぎ準備しておくことをおススメする」

「何故に?」

「ハンバーグに玉ねぎって入れるだろ?」

「作者を夕飯とか正気か!」

「大丈夫だ! この作品に狂気って概念ねえから! この馬鹿のせいで」

 

 ボキ……。

 

「へ……?」

「人に指差すんじゃないわよ」

「うにゃああああああああああああッ! 指折れたァァァァァァァァァッ!!」

 

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