第八十五話 淀子姉さん、バイクに乗る

淀子姉さん、バイクに乗る

「はぁ……なんかくたびれたなあ」

 

 色々濃密だった五月もそろそろ終わり。

 私は日本茶を飲みながら、静かに休みを過ごしていた。

 

「今日は、何もありませんように」

 

 確かこの話で、二章本編は最終回だった筈だ。

 最終回に何かが無きゃいけないなんて事はない筈だ。

 ダラダラ過ごしている所を三ページも流しておく程度で、十分だろう。

 

「ふっふっふーん♪」

 

 ダラダラ過ごしている所を三ページも流しておく程度で、十分だろう。

 

「はーつーッ! 出掛けよー!」

 

 ダラダラ過ごしている所を三ページも流しておく程度で、十分だろう。

 

「バイク乗るわよッ!」

「ダラダラ過ごしている所を三ページも流して

「いい加減にしなさいよ?」

「うるせえ。今日はダラダラするんじゃい」

「ダメよ。まだ暴れ足りないわ」

「オメエの体力が尽きるまでやったら作者と私が死ぬわ」

 

 ただでさえネタに困ってる小説なのに。

 

「だからネタ作ってあげてるじゃない。ほら、準備しなさい」

「へーい」

 

※※※

 

「じゃじゃーん♪ これが私のバイクよ」

 

 ……。

 

「どうしたのよ」

「姉さん」

「なーに?」

「領収書見せろこの野郎」

「うん♪」

 

 ……。

 

「だーかーらー……」

 

「なァんで私持ちなんだよォォォォォォッ!!」

 

「何って……アンタ長財布みたいな雰囲気の人じゃん」

「長財布みたいな雰囲気って何? 私はテメエの財布じゃねえよ」

 

 しかも悪びれる事なく、綺麗な瞳でクズ発言をするこいつを逆に尊敬するよ。

 

「いやあそれほどでも~」

「褒めてねえよクソが」

「あ?」

「すみません」

 

※※※

 

「しっかり捕まって~。あ、一応言うけど胸触ったら叩き落すからね」

「誰もテメエの胸なんか興味ねえよ」

「あとで屋上ね」

「どこの屋上だよ」

「じゃあ、行くわよ~」

 

※※※

 

 風と一体になるようにして、バイクは路上を走っていく。

 法定速度は違反していない。

 

「あれ、お前やっぱりちゃんと教習受けたのか? 前回の話でそんな描写全然無かったけど」

「あのね初、大事なのは免許じゃないのよ。技術があるかどうかよ」

 

 お前の技術ははっきり言って信用したくねえ。

 

「高速走るわよ~」

「いや、高速は流石にやめた方が」

「大丈夫よ。一応高速も教習受けたから」

「ほー。どんな?」

 

「高速道路で女を抱きかかえながら走る方法を、私が教えた」

 

「ごめんやっぱ超不安。超帰りてえ」

「大丈夫よ。ほら、料金所」

 

 てか、え、またこいつ私に金払わせる気?

 

『通行出来ます』

 

 あれ?

 

「ちょっと待て。お前ETCなんていつ付けたんだよ?」

「え? 買ったわよ」

「領収書は?」

「浅井初で」

「テメエェェェェェェッ!」

 

 てか領収書ネタ多すぎだろ。

 

※※※

 

 まあ、順調だった。色々。

 でも姉さんの事だから、すぐにトラブルは起きた。

 

「今バンって音したぞ」

「……初」

「ああ」

「パンクした」

「知ってた」

 

 この後、ちゃんと通報しましたとさ。

 

「あ、レッカー代も浅井初でお願いね」

「いい加減にしろォォォォォォッ!」

 

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