第八十話 童貞医を救え! その五

家にて。

 デートを終えた姉さんが帰宅するや否や、こう告げた。

 

「はっきり言って、ダメねあいつは」

 

 やっぱりか。

 

「どこら辺がダメだった?」

「だから全部よ。カツアゲしたら引いてるし、十九万のバッグは買ってくれないし、昼飯は牛丼屋だし。馬鹿じゃないの?」

「それはお前が悪いだろ」

「? 何か言った?」

「なんでもありません」

「てかアンタ息荒いわね。私が帰って来るまで何してたの?」

「はあ!?」

 

 な、ナニもしてないけど。

 

「うん。それはナニかしてたわね。だって臭うもん」

「か、軽い運動だ!」

「あのさあ、この作品ただでさえ問題児なんだから、これ以上問題増やさないでよね」

「それはオメエだろ!?」

 

 問題増やしてる元凶が何か言ってます。

 

「一応試験はしたから、あとはアンタが何とかしなさい」

「えぇ……姉さんが何とかする話になってただろ?」

「あの何故〇の風の文章で私視点やるの超疲れるのよ。だからアンタがやりなさい」

「ちっ」

「舌打ちしたわね?」

「すみません」

 

※※※

 

「と、いうわけで諦めろ」

「じゃねえだろォォォォッ!? お前何簡単に見捨ててんだよ!」

「一応姉さんから聞いた。まあ姉さんが色々とバカでぶっ飛んでて、疲れるのは分かるが、お前はそれを抜きにしても女の扱いがなってねえ」

「いやいやいや、なんで!? どー考えてもあいつが悪いだろ!」

「んー……まあ仕方ねえ。最後の手段に出るか」

「最後の手段?」

「こうなったらどんな女とでも付き合えるように鍛えるのをやめて、もうその子自身の性格や趣味を調べるしかねえ。次はいつ会えそうなんだ?」

「えーっと確か……」

「病院のパソコンの画面をスマホに保存とか、本当にお前捕まっても知らねえぞ」

「愛の為なら何でも許される。それがこの世だろ?」

「いや犯罪はダメだろ」

 

 フリックが終わり。

 

「明日来るよ」

「そうか」

「そんなわけで、明日頼むわ」

「ちょっと待って」

「あ?」

「この恰好で見るのは流石にきついから、何かナース服とかねえか?」

「あるよぉ……ナース服あるよぉ!」

「よし、それ借りるぞ」

 

※※※

 

 ――てーれーてってってってー♪

 

「ナニコレ」

「ドラ〇エの宿屋の効果音のつもりらしいわ」

「普通に次の日で良くね?」

 

 病院にて。

 

「おっす藍田」

「やあやあ。まだターゲットは来てないよ」

「そうか。ちゃんと準備しておけ。今回ちゃんと趣味嗜好を調べた上で、次は告白に踏み出すんだからな」

「お、おう!」

 

 まあ余計な事を言わないように見張るか。

 

「おはよう藍田先生」

「あ、院長。おはようございます」

「研修医生活、もう慣れたかね?」

「はい!」

「ところで藍田くん。最近、私のパソコンを勝手に操作している不審者がいるって聞いたんだけど、何か知らないかな?」

「……え?」

 

 やっぱりバレてたァァァァァァッ!!

 だから言ったじゃん! 捕まっても知らんよって! どうすんだこれ、藍田ァァッ!

 

「いや、知らないっすね。最近病院を荒そうとしている美人ゴリラを見かけたんで、そいつが犯人じゃないっすか?」

「び、美人ゴリラ……?」

 

 うわこいつ正気か? 姉さんに罪擦り付けるとか。

 

「ま……まあよろしい。しかし君も優秀な外科医とは言え、まだ研修医。そこのナースと遊んでいる余裕はない筈だぞ」

 

 こいつもこいつで馬鹿かよ。一応服着といて正解だったけど、従業員の顔くらい覚えとけよ。

 

「は、はい頑張ります!」

「では、今夜の手術も期待しているぞ」

「……」

「行ったな」

「ああ。まさかバレてるなんて思わなかった」

「私も」

 

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