第七十三話 淀子VS美咲


「浅井淀子さん! 私と! 勝負しなさい!」

 

 ……こいつ、死ぬ気か?

 

※※※

 

「良いわよ~。何で勝負したいのか言いなさいよ美咲」

「今まで私は、貴女の素行も直すように初さんに言ってきました。直接手を下すのは危険ですから。ですが、もう初さんに任せておけません。私自ら、貴方を倒してみせます!」

「そっか。じゃあ殺し合いする?」

「やめろ姉さん。あれはただのバカだから」

「いえ。殺し合いはしません。それ以外の勝負です。それ以外で、貴女が得意な分野で勝負しましょう」

 

 参ったな……。姉さん何も出来ないように見えて意外と特技多いからな……。

 

「良いわよ。三番勝負で行こ」

「望む所です」

「もしアンタが一回でも勝てば、アンタの勝ちで良いわよ。ただし、負けたらアンタは私の奴隷よ」

「も、勿論良いですわ!」

 

 黒〇君に影響されたのか……?

 

「健人くんカッコいいから良いじゃない」

「ここで少女漫画の話されても分かる人いねえんじゃねえか……?」

 

 何やかんやで勝負が始まる。

 

※※※

 

 一回戦は百メートル走。公園に移動し、私が線を足で引き終えた後、二人はスタート地点に。

 

「……これする意味あるのか?」

 

 姉さんの移動速度を知ってる私には分かる。

 まず足の速さで勝つのは無理だ。

 

「ど……度胸ですわ!」

 

 うんごめん。度胸で勝てたら十六年も苦しまないよ。

 

「お腹空いたわ~」

 

 姉さん余裕って言うか……ほぼ眼中にないって感じだしな。

 

「良いか~?」

「良いわよ~」「良いですわ!」

 

 もう勝負見えてるけど。

 

「よ~い……ドン!」

 

 ――ドガン!!

 

「は……?」

 

 何だこの爆発音。確かに姉さんが走ると余波で風起こるけど……。

 こんな音はしねえ筈……。

 

「あ……あともう少しですわ~!」

 

 美咲が何かしたのか!

 まあ分かるけどさ。美咲……それで勝ったつもりになってるようじゃ甘いよ。

 

「あ……あともう

「はいゴール!」

「ゑ……?」

 

 だから言ったのに。

 

「考えたわね~。私を吹き飛ばそうとか。でも甘いわ。理科室の素材で作れる火薬で私を殺そうとか」

「え……えええええええええええッ!?」

「というわけで、一回戦は私の勝ちね」

「あ……鮮やかに負けましたわ……」

 

※※※

 

 二回戦。大食い対決。

 食べるものは吉川の時と同じく、フライドポテト。

 

「この店のポテト美味いからいくらでも食えるわ」

「そ、それは私も同じ! 負けませんわよ!」

 

 これはズルしても負けるか……?

 

「よーいスタート!」

 

 その時……信じられない事が目の前で起きた。

 姉さんのポテトと、美咲のポテトが。美咲にも視認出来ない速度で入れ替わる。

 

「あむ……ゔっ……」

 

 美咲はすぐに苦しみだす。

 

「私の思った通りね」

「も、漏れそうですわ……」

「甘いわね。私に同じ手が通用すると思う?」

 

 こいつの勘凄すぎる……。

 

「だ、駄目ですわぁ……」

「早くトイレ行けよ!」

 

『しばらくお待ちください』

 

※※※

 

 三回戦目。

 

「最後は……私は何もしない」

「え?」

「代わりに、私がいつも襲う不良集団を襲って、私以上の金額を奪えたら勝ちにするわ」

 

 被害増える事するなよ……。

 

「わ……分かりましたわ!」

「ここで負けたら奴隷決定だから覚悟しなよ」

「淀子さんの言いなりになんてなりませんわ!」

 

 こいつが少女漫画とか読むのか……。

 

「あれよ」

「げっ……淀子だ!」

「心配しないで~。今日はこの子と遊んでもらうから~」

 

 美咲を突き出す姉さん。

 

「か……かかってこい! ですわ!」

 

 めっちゃビビってるじゃん。

 

「馬鹿にしてんのかァ……?」

「私に勝てるとお思いですか?」

「お思いだこの野郎!」

「行きます!」

 

※※※

 

「おいごら……金出せ眼鏡女!」

「す、すみません! 出しますから命だけは……命だけはァっ!」

 

 あーあ……。

 

「私の勝ちね」

 

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