第五十九話 定期テスト その三


 問題が馬鹿過ぎた現文に、問題が簡単過ぎた数学の次は、化学。

 

『問一 H2Oは?』

 

 水。

 

『問二 H2』

 

 水素。

 

『問三 O2』

 

 酸素。

 いや簡単過ぎるだろ。

 

『問四 NH3』

 

 いきなり地味に難しいのきたな。

 答えはアンモニアだ。

 

『問五 問四の解答が分からなかったたかしくん。悲しさのあまりトイレに駆け込みました。さて、何を知った?』

 

 はあァァァァァ!?

 いや問題適当過ぎるだろッ!

 分かんねえけど……恐らくトイレの臭いが問四の答えって分かったとかそういうの!?

 まあそう書くか。

 

※※※

 

 続いて日本史。

 

『問一 桶狭間の戦いで勝ったのは?』

 

 織田信長。

 

『問二 織田信長は徳川家康と、何同盟を結んだ?』

 

 清州同盟。

 

『問三 長篠の戦で使った武器』

 

 鉄砲。

 

『問四 本能寺の変で信長を倒した人物』

 

 明智光秀。

 どうせこの次あれが来るんだろ?

 

『問五 本能寺の変を教科書で見たタカシくんは、信長の仇を討ちたいと思って京都に向かいました。この時の光秀の心情を答えよ』

 

 分かるかァァァァァァァァッ!!

 いやタカシくんの心情で攻めてくると思ったら、今度は光秀!?

 タカシくん生きてるかもだけど、光秀死んじゃってるよッ!!

 もう書くしかねえだろッ!

 

『へんじがない ただのしかばねのようだ』

 

 これで良いだろう。

 

「はいテスト止め。後ろから回して」

 

※※※

 

 数日後。テストの順位が発表された。

 結果は一位。どうやらあの答えで良かったらしい。

 

「きーッ! なんでまた負けてしまうのですかァァァァァァッ!」

「いや悪い。私もなんで勝てたのか不思議で仕方ねえ」

「うるっせえ! 今回こそ勝つつもりだったのに! 邪魔しやがってェェェェェェッ!」

「落ち着けよ。私も完全に一位じゃないみたいだぜ?」

 

 私の隣には、吉川の名前もあった。全部幸運でどうにかしたのだろう。

 大したものである。

 

「ね~初。アンタ何位~?」

「一位。姉さんは?」

「うん。最下位。しかも赤点補習ありよ」

「……」

 

 まあ、あのテストなら仕方ないか。

 

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