第五十一話 異世界道具店


 ゴールデンウィーク最終日。

 遂に来てしまった。例の店に。

 

「ただならぬ香りがするだろう?」

「あ……ああ」

 

 ちょっと待て!?

 何だここは! 路地裏にある時点で色々ヤバい香りしかしないし!

 大体名前も異世界道具店って!

 

「ここってどんな店なんだ?」

「ふっ……入ってみれば分かるさ」

 

 色々ヤバそうだなあ……。

 

※※※

 

 入ってすぐに出迎えたのは、分かれ道だ。

 片方には異世界道具店、もう片方には『喫茶店ろーれらい』とある。

 

「……すげえ聞き覚えがある気がする」

 

 なろう時代にそんな名前の店に寄った記憶がある。

 

「喫茶店と異世界道具店って、ここは店員が二人いるのか?」

「ふっ……違うな。店員は一人。この店では最初にマスターの珈琲を頂くのが礼儀なのさ」

 

 あれ、前よりシステムがめんどくさい事に。

 

「ついてこい、貧乳」

「ついに呼び方雑になったな!」

 

※※※

 

「珈琲の魔術師……参ったぞ」

「またその仇名なの? 江代ちゃん」

 

 珈琲の魔術師と呼ばれた男が振り向き、江代に苦笑する。

 

「珈琲の魔術師こと、遠藤安信。我が忠実なる僕の一人だ」

「いや君の僕になった覚えはないよ」

 

 割とまともそうだ。

 

「黒き苦汁を二つ」

「はいはいブラックコーヒーね。江代ちゃんのはミルク入れとくから」

「いらんと言うておるのに」

「いやいや、江代ちゃん苦くて飲めなかったじゃん」

「ふっ……あれはただの……えーっと」

「言い訳考えるの下手か!」

 

「ところで、そこの君は?」

「あー、私こいつの姉の初だ。いつも妹が世話になってんな」

「いえいえ。はい、ブラックコーヒー二つ。江代ちゃんのはミルク入り」

「だから要らぬと言っておるだろう」

「いただきます」

 

 丁寧な作りだ。あまり苦さを感じない。

 

「美味しいぜ」

「でしょ?」

「ところでここってどんな店なんだ?」

「あー俺がここで道具店も開く事になった経緯聞きたい?」

「まあな」

 

 異世界道具店って言うくらいだからな、それなりの事情がありそうだ。

 

「なんか俺もよく分かってないんだけど、ここって異世界と繋がりやすいらしいんだよね。だから他の物語のアイテムが出てきたりする。まあそれを放置しておくのもなんだから、それの売買も商売にしたわけだよ」

「ほへー……」

 

 買い物シーンは映さない方が良いだろうか。

 

「面白そうではないか。こいつに最近入った品を見せてやりな」

「色々マズい香りしかしねえ」

「最近はこれかなあ」

 

 左側から順に手に取っていく。

 一品目。

 

「ヘアピン? しかも見覚えがある奴だな」

「それ確か、超能力者専用だから君には

「今すぐ返して来い!」

 

 今頃その世界滅亡しかけてるぞ多分。

 二品目。

 

「おい……これって」

「あーこれを喰うとゴム人間にな

「ル〇ィ逝っちまったのかァァァァァァァァァッ!?」

「え、なんで?」

「悪魔の実って所有者が死なないと復活しねえんだぞ……?」

「え!?」

 

 三品目。

 

「これは……」

「皆もポケモン、ゲットじゃぞー!」

「どこで使うんだよこれ!」

「ふっじー、さふぁりぱぁぁぁぁ

「やめい!」

 

 最後の四品目。

 

「……」

「これは?」

「アウトだよッ!」

「ええ!」

「ロトのつ〇ぎ出しちゃう!? 宝箱の中にちゃんと入れてなかったのか!?」

「らしいね。宝箱ごとゲートから出て来たし」

「その世界だと竜王が世界の半分くれるとか言って、世界滅ぼすオチになりそうだな……」

 

「てか……真面目にゲートを何とかすべきだぞ」

「ふっ……良いでは無ないか貧乳の銃士。この剣は扱いやすそうだぞ……」

「お前が使ったらあかん奴だからなそれ」

「吾に使えない剣などないッ!」

 

 体勢を崩す江代。

 

「うおおおおおッ!」

「流石に重すぎて無理だったみたいだな」

「あれ、確か江代ちゃん……ジャンプで何メートルかくらい飛べるとか言ってなかった?」

「それはお安い御用だが……吾にこの武器を扱うのは無理みたいだ。まだ力が足りん」

「力云々じゃなくて著作権的にあぶねえから使用禁止だ」

「どうしてだよぉお!」

「藤原竜也になってもダメだ」

「……あ、オチ用意する?」

「オチ?」

 

 確かに収集つかなくなってきたな。

 

「この店では、オチが無い時の伝統芸能があってね」

 

 短冊用の笹を取り出して、そのまま振る。

 

「笹は振っても、オチないです」

「期待した私が馬鹿だった」

 

※※※

 

 今回登場した遠藤安信は、私の友人の松岡浩児様(Twitter:@lavalloon0725 )のキャラです。

 今後三姉妹のキャラとして使う契約をしました。彼が主人公の小説を、松岡様もなろうにて書いておりますので、是非そちらもご覧下さい。


『しがない珈琲屋の店長』 

https://ncode.syosetu.com/n9763ea/

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