第四十三話 ボーリング その一

ゴールデンウィークも残り半分。

 本当は残りをダラダラしようと思っていた。

 しかし、和泉に誘われ、私はボーリングに来ていた。

 馬鹿共とセットで。

 

「……あのさ、何でお前らここにいんの?」

「なんでって、アンタがボーリングに行くって言うからついてきたんじゃない」

「ふっ、吾にはここの闇が……よく見える……」

「帰ってくんない?」

「まあまあ初ちゃん。人数が多い方が楽しいと思うよ」

「人間が問題過ぎる」

「それ特大ブーメランよ」

「お前らよりはマシだ」

 

 こいつらの事だ。どうせ無茶苦茶やるに決まって……

 

「じゃあやるわね」

「えっ! ちょっまっ――アアァァァァァァッ!!」

 

※※※

 

『世の中』の読み方を教えてあげよう。『りふじん』と読むんだ。

 

「どうしたん?」

「どうしたんじゃねぇよ!! なんでいきなり私を投げた!?」

「アンタならボールより面積広いからストライク余裕じゃん。ほら」

「クソ……お前を投げ飛ばしてやりてえ」

「アンタが逆に投げ飛ばされて終わるわよ」

「くっ……」

 

 私怒って良いよな?

 

「ふっ……今度は吾がやろう。深淵の力、とくと味わうが良い……」

「……」

「喰らえ……ヘルファイヤーボォォォォォォォォゥゥゥゥルッ!!」

 

 うん、ガーターだな。

 

「どうしてだよぉお!」

 

 藤〇竜也出て来たな。

 

「次私の番~!」

「お、和泉か」

「えいっ!」

 

 思い出した。これが普通のボーリングだ。

 

「なんで忘れてるのよ」

「七割方お前らのせい」

 

 和泉と友達になるまで、私の周りにはろくな奴がいなかったからな。

 忘れても仕方ないだろう。

 

「次は初ちゃんだよ~」

「おう」

 

 私はボールを手に取り、正面を向く。

 

「どうすんだっけ」

「普通に投げれば大丈夫だよ~」

 

 えっと、普通……普通ね。

 あれ……ど忘れしちまったぞ……。

 

「普通ど忘れしないでしょ」

「姉さん黙ってて」

 

 あれ、どうすりゃ良いんだ。

 分かんねえぞ。

 教えてくれ。頼む……誰か……誰かァァァァァァッ!!

 

「うォォォォォォぉおおおおおおおおッ!!」

 

 ズルッ、ステン。

 

「あ――うわァァァァァァァァァァッ!!」

 

※※※

 

「いてぇ……」

「初ちゃん大丈夫?」

「悪い。パニクった」

 

 ヤバい……私が段々異常者に。

 てかなんでだよ。どういう風に考えたら自分でピンに向かって走るようになるんだ?

 

「アンタも人の事言えなくなったわね」

「黙れ事の発端」

「アンタがツッコミ担当なの知ってるけど、ボーリングのピンにツッコむ必要なくない?」

「うるせえ」

 

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