ヒーロー14 肉の盾

髭切に宿るかまいたちが警官の動脈を斬った。

次第に風が強くなり髭切が宙に浮く。


そして階段を上がって次々に警官を襲い始めた。


茨木童子は負傷した足を引きずりながら髭切を追いかける。

鬼の金棒を持っていないので足はすぐには治癒しない。


剣道有段者の警官が警棒で髭切を撃ち落として抵抗するが、

かまいたちに手首を斬り裂かれて警棒を落とした。


他の警官が落ちた髭切を足で踏み抑えたが、

かまいたちにアキレス腱を斬られた。


その負傷した警官達を茨木童子が拘束し操る。


通常なら人間の盾とされた警官に慎重になるはず。

しかし残存する警官達は容赦なく反撃している。


残る警官達は同僚を失った過去を持つ決死隊だった。

うまい具合に大物が釣れたのだ。


府警本部ビルの構造をフル活用して挟み撃ちし、

犠牲を払いながら通信指令室に茨木童子を追い込んだのだった。



里見が通信指令室を覗くと、

すでに味方の警官は全滅しているようだった。


満身創痍で座り込む茨木童子とそれを守る警官達しか居ない。


里見はヘルメットを置いて入り口の鉄扉の根元、蝶番を斬って外した。

ドアノブを持って盾とする。覗き穴も開けた。


今晩二度目の突撃。


パンパンパン!

銃弾が盾に当たる事は無かった。

警官もすでに重症なのだろう。


あっという間に距離を詰めたが、

人間の盾は固定砲台の様に茨木童子のそばから動かなかった。


まさしく肉盾。

里見は鉄盾越しに低い姿勢で令和の剣を横一閃した。


覗き穴越しに足元を見ると警官は倒れたようだが、

茨木童子が座ったまま動いた。


里見は鉄盾越しに閃光人形を投げる。

しかし突風が人形を吹き飛ばし、鉄盾には髭切が突き刺さってきた。


痛みに気付くと里見の左鎖骨も斬られていた。

とっさに鉄盾を手放す。


今度は髭切が金切り音を上げて鉄盾ごと迫る。


鉄盾の後ろに茨木童子が居ると思い、

ビームサーベルで鉄盾と髭切ごと袈裟切りする。


髭切は両断され落ちて動かなくなった。

無駄に視界が開ける。


里見は痛む左腕を右手で持ち、ズボンの左ポケットに入れて簡易固定した。


倒れた警官が動き始める。

令和の剣は茨木童子には効かない。


次は警官ごと斬り殺すしかない。

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