犬士編8 仁義

招雷の護符はドロ-ンに張り付けてある。

狛ちゃんを犬士とする為だ。


仕留める為には目や頭に槍を刺し、そこへ落雷させる位は必要だろう。


ドラゴンが両前足で犬神の胴体を掴んだ。

噛みつきを止めるつもりか、引きちぎるのか。


犬神がドラゴンの顔を見ると、目の前に鼻があった。


鼻に斜めに右腕を突っ込み、鼻輪の如くパイルバンカーを打ち込む。

完全にドラゴンの口が開いた。

しかし犬神は逆に口の中に下半身を入れる。


ドラゴンの両前足が不自由そうに犬神の胴体を引っ張る。

金剛力全開、パイルで踏ん張り鼻づらにしがみ付く。


左手で至近距離ゆえの死角から目に槍を突き刺した。


犬坂は地下大阪城で中継を見ていた。

犬坂「狛ちゃんドローンを槍に突撃」


上空を旋回中の護符付きドローンが槍に当たる。

犬神はそのドローンを掴んで槍に引っ掛けた。


犬坂「狛ちゃんやれ」


狛ちゃん『しょーがねえな』

回転カメラに巻き付けた紐が護符を千切った。


直後に落雷。


一度に留まらず二度、三度数える間もないオーバーキル。

絶命したドラゴンの顔面を焦がし続けた。


甲冑に落雷は効かないし、鼓膜も破れない。

暗視サングラスで見えてもいるが、すさまじい。


犬神「頼もしい事で」


ドラゴンは灰となり、光って集まる。仁の珠となった。

犬神はふところのスマホを取り出し、珠にカメラを向ける。


犬神「狛ちゃん褒美だ」


狛ちゃん『だよね』


スマホと珠をふところに仕舞って、有珠山を後にした。


運転中、珠転送で帰ればいい事に気付いたが、

レンタカー返却を一応済ませたかった。


犬神「犬塚さんは大丈夫だろうか」



同じころ、

犬塚は阿蘇山火口で八岐大蛇を観察していた。


全長は30メートルほど。

頭と尾が八つ、それをつなぐ胴体は特に太い。


犬塚は村雨の霧を辺りに立ち込めさせた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る