琵琶湖編9 妖怪犬士

犬村陽子は琵琶湖上空を天狗に化けてさまよっていた。


長年生きた妖狐は河童発生には拠点がある事を知っている。

しかし今回は河童の拠点がなかなか見つからない。

まず島を疑ったが、それらしき妖気は無かった。

そうこうしている内に、彦根城、長浜城で戦端が開かれた。


天狗姿で近寄るのは、はばかられる。

仕方なく河童に化けて湖底に潜る。


湖面を泳ぐ河童達を見上げると、もっと西から泳いできている。

西からのかすかな妖気をたどると、

白髭神社の湖上鳥居にたどり着いた。


天狗姿に化けて鳥居を潜り拠点に入る。

河童達は天狗姿にはじめは無反応だった。


青鬼を見つけたので妖狐に戻り、喉笛を噛み切った。

途端に襲い掛かる河童達。


前足で叩き伏せ、頭を噛み殺す。

さらに九つの尻尾はまるでニューヨークのタコ博士を思わせた。

自在に巻き付かせて振り回す。河童は振り回す物。

全滅させると、青鬼の首を噛み千切る。くわえて拠点を脱出した。


人の姿に戻って礼の珠をかざすと首が灰となり、珠に吸い込まれた。

更に神通力が上がった感覚。


犬村陽子は城での人間の争いには関知しない。

歴女は気掛かりだが、戦闘が始まってしまっては手遅れ。

妖怪の自分が参戦する訳にはいかない。

善い行いをしても、人に正体がバレては生きていけないのだから。

伏見稲荷神社に戻り自衛隊が勝つことを祈ることにした。



犬影は免許皆伝以来、誰にもその存在を認識されたことは無い。

USJ城の隠し部屋、その天井裏でタルナーダを監視していた。


タルナーダはクルーを殺すでもなく、逆に元気にしている。

コウモリが信の珠を咥えて部屋を飛んでいる。

タルナーダは何をするでもなくそれを一日中見つめるばかり。


琵琶湖の討伐勢が活躍するタイミングで、

犬影の忠の珠がせわしなく震える。

犬士集結を予感した犬影は、自身の忠の珠を部屋に落とし入れた。


眠っていたタルナーダの棺桶に忠の珠が当たって転がる。

タルナーダは棺桶から顔を出して転がる忠の珠を見つけた。


部屋を見渡しても、誰も居ない。

タルナーダは面倒くさそうに忠の珠を拾うと、

仕方なく大阪城へ向かうことにした。


犬影は免許皆伝以来、誰にもその存在を認識されたことは無い。

真の忍者である。



一連の妖怪パンデミックはことごとく犬士達に拠点を封じられた。

残党は警察、自衛隊、自警団が掃討する。


犬士は集結しつつあった。

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