第43話 物色!

 駅に到着して、改札口へとのびている階段を登った。改札口に到着すると、健太たち3人が、まだかまだかとソワソワしながら俺の迎えを待っていた。


 詩織がいち早く俺の姿に気が付き。ニコっとしながら手を振ってきた。


「やっときた。ヤッホー」

「悪い、お待たせ」

「おせぇぞ!」

「ホントどんだけ掃除してんの!」


 文句をたらたらと述べる二人に対して、綾香は後ろの方で、たははと苦笑いを浮かべている。


「ごめん、ごめん。結構散らかってたから、割と時間かかって……」


 俺がいい訳をすると、興味なさそうに相槌を打って、詩織は片手をつきあげる。


「あっそ。じゃあとっとと行こう!」

「おー!」


 健太が詩織に続いて元気よく拳を突き上げた。


「あはは……」


 そんな二人の姿を見て、綾香はまたもや苦笑いを浮かべていた。



 ◇



 スーパーでお菓子などの買い物を済ませ、俺たちはアパートの前まで到着する。


「ここが大地の住でるところかぁー」


 家の外観をまじまじと健太は眺める。


「結構ぼろいね」

「そういうこと言うのやめーや」


 詩織の正直な感想を、健太がどついて注意する。


「まあ、そんなに新しくはないかな……」


 綾香が苦笑いを浮かべながらも、合わせるように二人に向かってそう言った。


「あんまり期待すんなよ」


 俺たちはアパートの階段を二階まで登っていき、廊下を歩き、一番奥にある俺の部屋のドアまでたどり着く。

 俺が鍵を開けている間、健太と詩織はワクワクとした期待感を持った目で待っていた。


 カチっと音が鳴り、ガギの施錠が外れる。

 ドアノブを回して、ドアを開けた。


「どうぞ」


 3人を促すように中へと勧めた。


「おっじゃましまーす!」


 最初に元気よく部屋の中へ入っていったのは、詩織だった。


「お邪魔するぜ」


 次に健太が俺にそう詫びて中に入る。


「へぇ~意外と広いじゃん!」


 中に入り、玄関で部屋を一望し、詩織がそんな感想を述べていた。


「どれどれ? おー確かに広いぞ」


 続いて、健太も詩織の後ろから覗き込むように部屋を眺める。

 二人は靴も脱がずに玄関の前で部屋を一望していたので、渋滞して中に進めない。


「いいから、靴脱いでとっとと入れ」

「はーい」

「はーい」


 俺がそう言うと、二人は大人しく靴を脱ぎ、スタスタと今度は部屋の散策をするため、奥へと進んでいく。

 そんな様子を見ていた綾香が、俺の方を申し訳なさそうにしながら見つめる。


「お邪魔するね」

「お、おう……」


 な、なんだろう。綾香にかしこまってそう言われると、なんだが変な感じだ。

 二人に続くようにして、綾香は落ち着いた所作で、丁寧に靴を脱いで部屋へと入っっていった。

 俺も3人を迎え入れた後、ドアを閉めて、追うようにして部屋の中へと入った。

 靴を脱いで、部屋に入ると、先に入っていた二人が、物色を既に始めていた。


「おぉ、すげぇ! このマンガ全巻揃ってんじゃん! 読みたかったんだよねー」

「大地ベットじゃないんだ。エロ本どこかな~」

「おい、詩織やめろ」


 俺は、じとっとした視線で詩織を睨みつける。


「え~、いいじゃん。男なら大抵はこういうの持ってるもんっしょ! やっぱり、この辺りが……」

「あ~もう。やめやめ」


 納戸を開けようとする詩織を俺が制止して止める。


「あ、もしかして当たっちゃった?」


 口元を手で押さえながら意味ありげな笑みを浮かべてくる詩織。


「違うから、あんまり物色するのはやめろ」

「ちぇ~、つまんないの」


 詩織は唇を尖らせながらも、物色をやめてくれた。

 あぶねぇ……本当にバレるところだった。


 俺が冷や汗を掻いていると、詩織は綾香の方を見る。


「ねぇ、綾香はなんか気になるところとかないの?」

「へぇ!?」


 急に詩織に尋ねられ、身体をビクっとさせながら、綾香は目を泳がせた。


「えっと……その……」


 綾香はキョロキョロと部屋を見渡して、何かないかと必死に探していた。


「ま、まあ、外観にしては内装はしっかりしてると思う」


 ニコっと作り笑いを浮かべながら綾香が言うと、


「あ~確かにそうかも」


 と言いながら詩織が再び部屋全体を見渡した。


「はぁ……」


 綾香は、気づかれないようにほっと胸をなでおろしていた。



 そんなこんなで、部屋の物色タイムは終わり、部屋で各々がくつろぎ始める。

 健太は先ほど見つけたマンガを読み漁り、綾香と詩織は机で仲良く世間話をしている。俺は買ってきたお茶菓子や飲み物を用意し、机に置いた。


「で、何するの?」


 俺がみんなに問いかけると、思い出したように詩織が手をパンっと叩いた。


「そうだそうだ。ほら、健太アレ出して」

「ん? あぁ、アレな! おっけ」


 マンガを読んでいた健太は、詩織に言われると手を止め、持ってきた黒いリュックサックに手を伸ばした。


「これをみんなでやろうと思って」


 健太がリュックの中から取りだしたのは、最新ゲーム機だ。

 今大人気のゲーム機でコントローラーが左右に二つ付いているので、一人が持ってなくても遊べると評判であった。


「うちも持ってきたから4人でやろうと思って」


 どこから取りだしたのか、いつも間にか詩織も同じゲーム機を手に持っていた。


「これで4人でできるっしょ?」

「わぁ、すごい! 私やってみたかったんだよね」


 綾香が珍しく、子供のようにはしゃぎ、目を輝かせていた。

 ここで俺はふと疑問が浮かぶ。


「別にテレビ使わなくてもいいやつだし。俺の家に来てやる必要あった?」

「まあまあ、細かいこと気にしないでこっちに来る」


 俺は詩織に手招きされ。詩織の方へ向かい、隣にしゃがみこんだ。

 ゲーム機を見ると、既に起動されており、画面には、有名な乱闘ゲームのタイトルが表示されていた。


「よーし、じゃあじゃんけんでペア決めて、チーム戦で戦おう!」

「おっけ! じゃあせーの」

「ぐっとっぱ!」


 俺と詩織がグーで、健太と綾香がパーを出し、綺麗に二チームに分かれた。


「お、大地とだ、よろしく~」

「おう、よろしく」

「綾香ちゃんとか! 俺がフォローするから頑張ろうぜ!」

「うん!」


 こうして、俺たち4人の大乱闘がスタートした。

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