アイドル

表現力に驚かされた この歳になって本を読み始めた 私の好きなアイドルが小説を書いたから 本書を手に取りパラパラとめくると顔に風と文字が優しく突き抜けた


まるでアイドルが直接語り続けているように 脳の中で声を再生した


グループの中でも目立たなかった存在と言われていたが 私はそんな風に思わなかった

大勢いる中であの人だけを目で追い続けていた 一言も喋らなくても私には伝わっていていつかグループを脱退して他の仲間とバンド組むから そんな目をしていた


それから10周年 脱退することなくグループに所属していた 居心地のよさそうな顔

若気の至りだったのかな あの時私に向かってSOSを出していたのは間違いないよね でも安心した この世界から消えることのほうが悲しいですからね


突然小説を発表した 神様は彼に文才を与えた 私が神社へ行くたびに彼に文才をお願いしていたからかもしれない 彼の声が聞きたかった 彼の言葉 彼の思いを もっと もっと 私に 私にだけでいいから


本屋さんへと行き おすすめコーナーに置かれている 彼の小説を手に取った

私以外の人がこの本に触れることにすこしイラついた あなた達が買って読んでも伝わるはずないよね すべてのストーリーが私にだけピッタリとハマった


レジに並んでいる私の姿を思い浮かべていると思うとまた照れ臭い

買った直後に手作りの帯をそっと巻き付けた

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