9 帰り道

 今日は進級一日目なので、授業が午前中で終わる。給食を食べたら掃除をして、部活動に所属していない私はすぐに帰宅する。


 今日は私も紳一も仕事は何も入っていないため、午後からの予定は特にない。緑里も部活に入っているし、他に特別親しい友人がいない私は、遊ぶ予定も入っていなかった。


 帰ったらやることもないし、勉強でもしようか。紳一と共に買い物に行くのでも良さそうだが、私は花粉症だ。去年かかってしまった。今の季節、できれば極力外へ出たくない。今も、マスクは必須だ。


 帰ってから何をしようかと考えを巡らせながら、前で話している先生の話を要点だけ踏まえて聞き流し、終わるのを待っていた。


 帰学活が一組よりも早く終わった紳一は、ドアの前で待っていてくれた。今日は朝と同じように紳一と歩いて帰る約束だ。


「ごめん、ありがとう。」

「うん、帰ろう。」


 私たちがこうして二人でいると、みんなからの注目を浴びてしまう。慣れたというよりかは、視線を感じるのが当たり前になっていて、日常の一部と化している。


 何事も無いように普通に歩き、立っている先生に挨拶をしながら校門を出て、桜の連なる道に来たときに私のクラスにやって来た例の転校生の話になった。


「そういえば、一組に転校生来たらしいじゃん。

 女子がイケメンだって騒いでたけど。」

「うん。休み時間なんか一瞬で人だかりができてたよ。」

「へえ、俺はそいつ見てないけど。」


 そういえば、彼が休み時間に人を集めてくれていたおかげで、私が目立つ事がなく、休み時間はゆったり過ごすことができた。


 ストーカー説が浮上している彼だが、その点については感謝だ。ストーカーかどうかも、まだ彼と話をしていないのだ。ただの憶測にも満たない想像でしかない。


「どういうやつなんだ?

 …まゆみも、格好いいって思ったのか?」


 紳一は、私の方を見ずに言った。私が格好いいという言葉を否定しなかったからか、もしや少し妬いてくれているのかもしれない。というか、単純に自分が恥ずかしいのか。


「話してないからどんな人かはわからないけど、紳一と違う感じのイケメンだとは思ったよ。」


 思った事を正直に言った。どうしてか、ここで別に普通だったよ、なんて嘘は言えなかった。恥ずかしがる紳一をからかいたかったのかもしれない。


「ふーん、そうなんだ。」

「うん。」


 そうなんだとは言いつつも、受け入れてはいない様子だ。普通のように見せて、実は不機嫌になった。


 普段なら、紳一の方が何倍も格好いいけどね、とすっと言っただろう。しかし、そのような言葉は、今日は紳一がかわいく見えたので言わなかった。

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