3 だいじなもの

 プレゼントをもらったお礼として、食べていたフルーツを紳一にもあげた。


「これ、すごくおいしい。」


 紳一も私と同じように、一粒ずつ味を噛み締めながら食べていた。


 全部食べ終え、私は、プレゼントを大事に握り締めて五階にある自分の部屋に向かった。

 

 エレベーターは使わずに、自分の足で階段を上った。部屋は、上がって階段のすぐ右にある。紳一の部屋はその隣。上へ来る前に、

 

「わたし、おへやにもどる。」

 

 と紳一に言ったけれど、

 

「ぼくはまだここでみんなとあそぶ。」

 

 と、紳一は私について上がっては来なかった。


 私はもらった人形のオルゴールを机の隅に置いた。後ろに付いてあるぜんまいを回すと、聞いたことのあるクラシックの曲がピアノで弾いたような音で流れてきた。


「おお。」


 私は流れ出した音楽に一人で感心していた。最初は少ししか回していないのですぐに音が止まった。今度は、回せるだけ回して音楽を長く聴く。

 

 聴きながら、もう一つのプレゼントであるヘアピンを取り出した。私の髪の毛はくくれるほど長くはない。使うのは、もう少し伸ばしてからだ。今は仕舞っておこうと机の引き出しを開けた。


 すると、引き出しの奥に、みるからに大切なものをしまってありそうな箱を見つけた。というより、その赤い箱の蓋に、「だいじ」と私の字で書いてあった。


 …大事なものはここにいれていたんだっけ?


 また私の中に引っ掛かりが生まれた。こんな箱を作ったら覚えも、文字を書いた覚えもない。


 不思議に思いながら箱をそっと開けてみると、そこに入っていたのは私が身に付けるのにはまだ早そうなネックレスだった。お姉さんたちがつけているようなおしゃれなデザインで、真ん中に付いている赤いハートの飾りは、神秘的に輝いているようだった。

 

 そのネックレスを一目見た瞬間に、私は、これは絶対になくしてはならない物だと感じた。

 

 この箱にヘアピンを一緒に入れていいのかわからなかった。紳一からもらったヘアピンもとても大事なものに変わりないが、何かが違う。


 少し考え、結局、私はその箱に仕舞うのをやめた。机の上に置いてあった別の箱に入れて、別の引き出しに片付けた。


 …このネックレスってなんだろう。


 それは謎のままだった。不思議と、他の誰かに聞いてみようとは思わなかった。誰かに知られてはいけないような直感が、私にはあった。たとえ「パートナー」である紳一にも言えない。

 

 私は、自分だけの秘密にしようと決意した。この謎が解ける日はいつかやって来るだろうという思いも、私の心の中にはあった。


…なんか今日、わかんないこと多いなあ。変な感じ。


 そう思ったのと同時にオルゴールの音が止まって、また私はその事に気をとられた。感じた疑問が、再び生じることはなかった。

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