3月14日(日) 広島市中区三川町にあるギャラリーたむらで「小林孝亘展」を観る。

広島市中区三川町にあるギャラリーたむらで「小林孝亘展」を観る。


百貨店のウィンドウ・ショッピングでもいいから、できるだけ本物に触れなさい。そんな言葉を年輩の女性から、本か、ラジオか、どこからか聞いたことがある。


どのギャラリーも本物がないわけではないが、ギャラリーたむらさんはまだ半年も知らないくせに、常に本物を展示されている印象がある。


そんな場あたり的なイメージを裏切るように、器の展示だと思っていた「小林孝亘展」は絵画が壁に掛けられていた。


図形の組み合わせと、あとは器をモチーフにした絵に、枕や犬が描かれていた。どう見ても複雑ではない対象をどのように見せるのか、単純だから難しいという取ってつけたような言葉ではなく、マチエールがものを言う本物の作品だった。


ポストカードにも印刷されていた器の描かれた作品は、じかに触れないながら肌合いは職人の手による土と釉薬で焼成されたような質感を持っている。それは勘違いも甚だしく、目を近づけて観れば筆の運びは轆轤で回したように線をとらえていても、縦や縁取りの線など、目立って雑なところは存在しない。精巧な美術品らしく、一切の無駄が省かれており、色が生み出す形態は些細な幻を感じさせる。


少し古い作品だという犬の絵や、ペンと色鉛筆の遠近感が詰まった小品も見応えあるが、特に枕の絵のボリューム感と質感はぱんぱんに膨らむようだった。


ただ表面を観ていたい。それで満足を得られるほど、遠近どちらに観ても有無を言わない存在感がどの作品にも宿っていた。

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